親が高齢になり、お墓のことを考え始めた方へ。樹木葬は、民間の調査(鎌倉新書「第17回 お墓の消費者全国実態調査(2026年)」)で、購入されたお墓の47.4%を占めるほど選ばれています[5]。継ぐ人がいなくてもよく、費用も一般のお墓より抑えやすいことが理由です。
一方で、契約の内容をよく確かめずに選ぶと、「遺骨を移せない」「どこにお参りすればいいか分からない」といった問題が起こりえます。この記事では、霊園の広告では目立ちにくい樹木葬のデメリット6つと、契約前に確認したい点を整理します。
親子ナビ編集部は葬祭・宗教の専門家ではありません。具体的な契約は、霊園・寺院の説明と書面を確認し、家族で話し合ったうえで進めてください。
樹木葬の主なタイプ
「樹木葬」と一口にいっても、場所や埋葬の形によって雰囲気・費用・お参りのしやすさが大きく違います。見学や資料請求の前に、まず分類を押さえておくと、家族の間で話がかみ合いやすくなります。
| 比べる項目 | 里山型 | 公園型 | 庭園型 |
|---|---|---|---|
| 場所 | 山林などの一画 | 霊園内の区画 | 都市部の寺院・霊園 |
| 特徴 | 自然の中に埋葬する形。墓標は最小限 | 整備された霊園にシンボルツリーなどを植える形。広く普及している | 花壇や庭園風に整えた区画 |
| 交通・費用 | 交通の便がよくないことも | 霊園による | 交通の便がよい一方、費用は高めの傾向 |
さらに、埋葬の形には個別型(一定期間は区画ごとに埋葬し、その後合葬)と、合葬型(最初から他の方と一緒に埋葬)があります。費用や後から遺骨を移せるかどうかは、この違いで大きく変わります。
樹木葬のデメリット6つ
1. 後から家族が同じ区画に入れないことがある
樹木葬の多くは永代供養とセットで、最初から「子や孫が継がない」ことを前提にしています。そのため、後から「子どもや孫も同じ場所に入りたい」と希望が出ても、同じ区画に追加で入れないことがあります。
区画に入れる人数や、後から追加できるかどうかは契約によって違います。契約するときの気持ちだけで決めず、「何十年か先も納得できるか」を配偶者や子の世代と話し合っておきましょう。
2. お参りの場所が分かりにくい
合葬型や、1本のシンボルツリーの周りに多くの方を埋葬するタイプでは、故人がどこに眠っているかを特定できないことがあります。墓石に手を合わせることに慣れた親の世代や親族にとっては、「どこを拝めばいいのか分からない」と感じる原因になります。
個別型でも、植物が育ったり季節で景色が変わったりして、場所が分かりにくくなることがあります。名前を刻んだ銘板(プレート)を設置できる霊園もありますが、別料金になることが多いので、費用を含めて確認しましょう。
3. 合葬型は遺骨を取り出せない
将来、遺骨を移す可能性が少しでもあるなら、個別に埋葬する期間のあるプランを選び、その期間の長さを確認しましょう。
4. 天候や季節の影響を受けやすい
里山型や公園型はお参りの場所が屋外です。雨や雪、猛暑の日にはお参りが難しくなり、足元がぬかるむこともあります。高齢の親がお参りしたいと思っても、天候のために行けない場合があります。
また、植えた樹木が枯れたり、台風などで倒れたりすることもあります。その場合に霊園が植え替えるのか、費用は誰が負担するのかを契約書で確認しておきましょう。
5. 家族や親族の理解を得にくいことがある
「先祖代々のお墓に入らないのか」と、親の世代や本家筋から反対されることがあります。兄弟の間で意見が分かれることもあります。
情報の共有から決定までに時間をかけると、「勝手に決められた」という反発を避けやすくなります。
資料や見積もりを共有する
できれば親族と一緒に見学する
後日あらためて意見を聞く
菩提寺がある場合は、住職への相談も早めにしておきましょう。今のお墓を残すのか、墓じまいをするのかで、相談の内容も変わります。
6. 改葬(お墓の引っ越し)が難しい
転居などで樹木葬の遺骨を別の場所へ移したくなっても、合葬型ではできません。個別型でも、掘り起こしには霊園の許可と費用が必要です。
改葬をするには、墓地埋葬法第5条に基づいて、遺骨が今ある場所の市区町村長の許可を受けます[1]。施行規則第2条では、申請書に墓地の管理者が作成した埋蔵の事実を証明する書面などを添えると定められています[2]。
樹木葬は土の中に埋葬しているため、遺骨の取り出しに手間がかかることもあります。「一度納めたら動かさない」前提で、長く通える場所を選ぶのが現実的です。
樹木葬の費用とメリット
デメリットを6つ挙げましたが、樹木葬が多くの人に選ばれているのには理由があります。両方を見比べて判断しましょう。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 一般のお墓より費用を抑えやすい | 後から家族が同じ区画に入れないことがある |
| 継ぐ人がいなくてもよい(永代供養付きが多い) | お参りの場所が分かりにくい |
| 宗派を問わない霊園が多い | 合葬型は遺骨を取り出せない |
| 自然に還るという考え方に合う | 天候や季節の影響を受けやすい |
| 墓石を建てないため、維持の手間が少ない | 家族や親族の理解を得にくいことがある |
| 夫婦やペットと一緒に入れる霊園もある | 改葬が難しい |
民間の調査(鎌倉新書・2026年)では、平均購入金額は樹木葬71.7万円、納骨堂81.5万円、一般墓152.0万円でした[5]。これは1区画(1契約)あたりの金額です。都市部の庭園型などでは、これを大きく上回ることもあります。
公営霊園にも樹木葬に近い形式があります。たとえば都立霊園の樹林型合葬埋蔵施設(シンボルツリーの元に多くの遺骨を一緒に埋蔵する形式)の令和8年度の使用料は、多磨霊園2号基で遺骨1体あたり95,000円(粉状遺骨は31,000円)、雑司ケ谷霊園で112,000円(粉状遺骨は37,000円)です[3]。
都内に3年以上継続して住んでいることなどの申込資格があり、募集は年1回です[3]。
費用は「総額」で比べる
見積書の「永代使用料」だけを見て決めると、後から想定外の出費になることがあります。次の3つを足した総額で比べましょう。
永代使用料 + 銘板・プレートの設置費 + 管理料 = 総額
永代使用料
霊園・タイプで異なる
区画を使う権利の料金。永代供養料を含むことが多い
銘板・プレートの設置費
別料金のことが多い
名前を刻む場合にかかることがある
管理料
年払いか、契約時の一括払い
「無料」とうたう霊園でも条件を確認
総額
広告の金額ではなく、3つを足した総額で比べる
※年払いの管理料がある場合は、個別に埋葬する期間の年数分を足して総額を計算します。
年間管理料がかかる契約では、「永代使用料+銘板代+年間管理料×個別に埋葬する期間の年数」が総額の目安になります。広告に出ている金額だけで判断しないようにしましょう。
一般墓・納骨堂・永代供養との比較
| 比べる項目 | 一般墓 | 樹木葬 | 納骨堂 | 合祀墓・永代供養墓 |
|---|---|---|---|---|
| 平均購入金額(民間調査) | 152.0万円 | 71.7万円 | 81.5万円 | 調査の平均額は未掲載 |
| 継ぐ人 | 子や孫が継ぐ | 原則不要 | 期間後に合祀される契約が多い | 寺院・霊園が管理 |
| 向いている人 | 先祖代々のお墓を守りたい | 継ぐ人がいない、自然に還りたい、宗派にこだわらない | 都市部に住み、天候を気にせずお参りしたい | 費用を最も抑えたい、継ぐ人がいない |
平均購入金額は、鎌倉新書「第17回 お墓の消費者全国実態調査(2026年)」の数値で、1区画(1契約)あたりの金額です[5]。同じ調査では、購入されたお墓の種類で合祀墓・合葬墓が16.4%と、一般墓(15.2%)や納骨堂(15.5%)を上回りました。
合祀墓や永代供養の費用と選び方は「永代供養の費用相場と種類」で詳しく説明しています。
契約前に確認したい10項目と相談先
契約の前に、この下の「始める前に確認すること」の10項目を家族で確認しましょう。一つでも分からないことがあれば、その場で決めずに持ち帰るのが安心です。
国民生活センターには、墓に関する相談が2025年度に1,077件寄せられています[4]。公表されている事例には、墓地を購入した後に解約を求めたところ解約料を請求された、というものもあります。
困ったときは、消費者ホットライン「188」で近くの消費生活センターを案内してもらえます。


