「親の代からのお墓を、自分の代で守っていくのが難しい」「遠方で、年に一度のお墓参りも負担になってきた」。こうした事情から、お墓を片付けて遺骨を別の場所へ移す墓じまい(改葬)を考える家庭が増えています。
厚生労働省の衛生行政報告例では、全国の改葬の件数は2023年度が166,886件、2024年度が176,140件でした[5]。この記事では、墓じまいにかかる費用の内訳と目安、改葬許可の手続き、離檀料をめぐるトラブルへの備えを順に整理します。
なお、親子ナビ編集部は法律・宗教の専門家ではありません。具体的な手続きや金額は、自治体・墓地の管理者・石材店などに必ず確認してください。
墓じまい(改葬)とは
墓じまいとは、今のお墓から遺骨を取り出し、墓石を撤去して区画を返し、遺骨を別の場所(永代供養墓・樹木葬・納骨堂など)へ移すことをいいます。法律上は改葬と呼ばれます。
改葬許可の申請に必要なもの
墓地埋葬法施行規則第2条では、改葬許可の申請書に次のような書類を添えると定めています[2]。
- 墓地や納骨堂の管理者が作成した、埋葬・埋蔵(収蔵)の事実を証明する書面(いわゆる埋蔵証明)
- 申請者が墓地の使用者でない場合は、墓地の使用者の承諾書
- その他、市町村長が特に必要と認める書類
実際には、多くの自治体が改葬先の受入証明(墓地の使用許可証など)の提出も求めています。申請書の様式や必要書類は自治体ごとに異なるので、今のお墓がある市区町村のホームページで確認しましょう。
墓じまいの費用の内訳
費用は、撤去工事・お布施・離檀料・手続き・改葬先の合計で決まります。墓石の撤去やお布施には公的な基準がないため、金額は参考の目安です。
墓石の撤去・整地 + 遺骨の取り出し + 閉眼供養のお布施 + 離檀料 + 改葬先の費用 = 総額
墓石の撤去・整地[10]
1㎡あたり8万〜15万円ほど
重機が入れない立地などで上がる
遺骨の取り出し[11]
1体あたり数万円
撤去費用に含まれることもある
閉眼供養のお布施
決まった額はない
金額は寺院に確認する
離檀料(寺院墓地のみ)[7]
決まった基準なし
法令で定められた費用ではない
改葬先の費用[12]
樹木葬 平均71.7万円/納骨堂 平均81.5万円
1区画(1契約)あたりの平均購入金額。1体あたりとは比べられない
総額
墓の広さ・遺骨の数・改葬先で決まります
※金額は民間の相場記事・調査をもとにした参考の目安です。墓石の撤去やお布施に公的な基準はありません。改葬許可の手数料は自治体によって異なります。
撤去工事の費用は、墓地の面積・墓石の大きさ・重機が入れるかどうかで変わります。石段の上や狭い通路の奥にあるお墓では、手作業での運び出しになり費用が上がることがあります。外柵や灯籠などの付属物が多い場合も同様です。
費用が上がりやすいケース
- 重機が入れない立地(山の斜面、狭い参道、石段の上など)
- 区画が広い、外柵・灯籠などの付属物が多い
- 取り出す遺骨の数が多い(改葬先の費用も体数分かかる)
- 都市部の納骨堂や個別区画の樹木葬など、改葬先の費用が高い
費用を抑えやすいケース
- 公営霊園で、離檀料がかからない
- 区画が小さく、墓石が小型
- 改葬先を合祀型の永代供養墓にまとめる
- 複数の石材店から見積もりを取って比べる
公営霊園では、区画を返す際に原状回復費用の一部を助成する自治体もあります(例:千葉県市川市の「市川市霊園一般墓地返還促進事業」[9])。予算に達して受付を終えることもあるので、最新の状況を自治体に確認してください。
改葬先ごとの違い
費用だけでなく、「後から遺骨を取り出せるか」「お参りする場所があるか」も比べて選びましょう。移す先ごとの費用と注意点は、永代供養の費用相場と種類、樹木葬のデメリットと選び方、散骨の費用で整理しています。
| 比べる項目 | 永代供養墓(合祀) | 永代供養墓(個別安置) | 樹木葬 | 納骨堂 | 海洋散骨 |
|---|---|---|---|---|---|
| 費用の傾向 | 比較的安い | 安置期間で変わる | 区画の形式で幅が大きい | 都市部で高めの傾向 | 委託か乗船かで変わる |
| 特徴 | 寺院・霊園が供養と管理を続ける | 一定期間は個別、その後合祀が多い | 樹木や草花を墓標にする | 屋内で天候に左右されずお参りできる | お墓を持たない |
| 注意点 | 合祀後は遺骨を取り出せない | 安置期間と期間後の扱いを確認 | 合葬型は取り出せないことが多い | 年間管理費や使用期間の有無を確認 | 粉骨が必要。お参りの場所がない |
民間の調査ですが、鎌倉新書「第17回 お墓の消費者全国実態調査(2026年)」では、平均購入金額は樹木葬71.7万円、納骨堂81.5万円、一般墓152.0万円でした[12]。これは1区画(1契約)あたりの金額で、遺骨1体あたりの費用とは単純に比べられない点に注意してください。
選ぶときの注意点
- 納骨堂や個別型の永代供養には、安置期間があることが多いです。 期間が過ぎた後に合祀されるのか、追加の費用がかかるのかを契約書で確認します。
- 散骨は、場所と方法に配慮が必要です。 厚生労働省が公表している「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」では、焼骨を形が分からない程度に粉状にすることや、陸上では区域を定めた場所で、海では海岸から一定の距離以上離れた場所で行うことなどが示されています[4]。条例で散骨を制限している自治体もあります。
- 手元供養をする場合も、最終的な行き先を決めておくと安心です。 保管している人が亡くなった後に、遺骨をどこへ納めるかを家族で話しておきましょう。
判断の軸は「継ぐ人」と「お参りの頻度」
- 継ぐ人がいて、お参りを続けたい → 個別区画の樹木葬・納骨堂
- 継ぐ人がいて、お参りは少なくてよい → 個別安置型の永代供養・合葬型の樹木葬
- 継ぐ人がいないが、お参りの場所は残したい → 合祀型の永代供養墓
- 継ぐ人がいない、自然に還したい → 海洋散骨など
墓じまいの手順と期間(6ステップ)
親族やお寺との関係にも関わる手続きです。次の順番で進めると、もめごとを避けやすくなります。
親族で話し合う
事情を説明し、同意を得ます。後のトラブルを防ぐため、最初に時間をかけたい工程です。
墓地の管理者に相談する
いきなり「離檀します」と伝えるより、「継ぐ人がいない」「遠方でお参りが難しい」といった事情を相談する形で切り出すと、話し合いが進めやすくなります。
改葬先を決める
改葬許可を申請する
閉眼供養・遺骨の取り出し・撤去
僧侶に閉眼供養を依頼し、石材店が遺骨を取り出して墓石を解体し、区画を更地に戻します。
改葬先に納骨する
全体:数か月かかることが多い(話し合いが長引くと延びる)
離檀料のトラブルを避けるために
国民生活センターには、墓に関する相談が2025年度に1,077件寄せられています(PIO-NETに登録された件数)[6]。公表されている相談事例には、「菩提寺に墓じまいを依頼したところ、高額な離檀料を請求された。規約などの定めもなく請求根拠が不明」というものがあります。
離檀料は、これまでお世話になったお寺へのお礼という性格のもので、金額に明確な基準はありません。国民生活センターの情報誌『国民生活』(2025年12月号)の解説でも、数百万円というケースもあるとしたうえで、お寺との話し合いで離檀料の根拠や額を尋ねることや、檀家総代や同じお寺の檀家になっている親族に慣習を確認する方法が紹介されています[7]。
1. 事情を伝え、感謝を先に伝える
「子が遠方で継げない」「自分も高齢でお参りが難しくなった」など、現実の事情を率直に相談しましょう。長年のお付き合いへのお礼を先に伝えると、話し合いがこじれにくくなります。
2. 金額は具体的に確認し、記録を残す
「お気持ちで」と言われた場合は、目安の金額を尋ねておくと、後から追加で求められるといった行き違いを防ぎやすくなります。話し合いの内容は、日付とともにメモに残しておきましょう。
3. 困ったら第三者に相談する
払えないほど高額な請求を受けたり、話し合いが進まなくなったりしたときは、消費者ホットライン「188」に電話すると、近くの消費生活センターなどの相談窓口を案内してもらえます[8]。法的な判断が必要な場合は、弁護士に相談しましょう。
石材店(撤去業者)の選び方
墓石の撤去工事は、業者によって見積もりの内容や金額が変わります。次の点を比べましょう。業者の種類ごとの違いや、見積もりの取り方・断り方は「墓じまい業者の選び方」で詳しく整理しています。
- 見積もりの内訳:「一式」ではなく、解体・運搬・処分・整地などの内訳が書かれているか。
- 追加費用の条件:重機が使えない場合や、想定より遺骨の数が多い場合などに、追加費用がかかる条件が説明されているか。
- 墓地の指定業者の有無:霊園によっては工事できる石材店が決められています。先に管理者に確認しましょう。
- 工事中の事故への備え:隣の区画や通路を傷つけた場合の補償について説明があるか。
- 地元の石材店も含めて比べる:遠方の業者に頼むと出張費がかかることがあります。地元の業者を含め、複数社の見積もりを取って比べましょう。

