「お墓を継ぐ人がいない」「自然に還してほしいと言われていた」。こうした理由から、遺骨を粉状にして海や山にまく散骨を考える家族がいます。散骨の費用は、業者に任せるか、家族が船に乗るかで大きく変わります。
この記事では、散骨の種類ごとの費用の目安、お墓から遺骨を取り出して散骨するときの手続き、散骨を制限している自治体の例、業者の見積もりで確認したい点を順に整理します。
なお、親子ナビ編集部は法律・宗教の専門家ではありません。具体的な手続きは、市区町村・墓地の管理者・散骨業者に確認してください。
散骨の費用は方法で決まる
散骨の費用は、委託散骨・合同散骨・個人(貸切)散骨のどれを選ぶかでほぼ決まります。散骨の料金には公的な基準がないため、ここでは民間の目安を紹介します。
委託散骨(業者に任せる)[12]
5万〜8万円
家族は乗船しない。業者がまとめて行う
合同散骨(複数の家族で乗船)[12]
20万円ほど
船を複数の家族で使う
個人(貸切)散骨[12]
30万円ほど
一家族で船を貸し切る
粉骨だけを業者に頼む場合[12]
2万〜3万円
散骨の料金に含まれることもある
費用
選ぶ方法1つ分+含まれていない項目
※民間の相場記事をもとにした参考の目安です。散骨の料金に公的な基準はありません。方法ごとの金額は足し合わせるものではなく、選んだ方法の料金に、含まれていない項目(粉骨など)が加わります。
同じ方法でも、粉骨・献花・散骨証明書・乗船人数の追加などが料金に含まれるかは業者によって違います。見積もりでは総額だけでなく、何が含まれているかを並べて比べましょう。
方法ごとの違い
| 比べる項目 | 委託散骨 | 合同散骨 | 個人(貸切)散骨 |
|---|---|---|---|
| 費用の目安(民間) | 5万〜8万円ほど | 20万円ほど | 30万円ほど |
| 家族の乗船 | しない | する(他の家族と一緒) | する(家族だけ) |
| 日程 | 業者が決める | 業者が決めた日から選ぶ | 家族の希望で決めやすい |
| 向いている場合 | 費用を抑えたい・遠方で立ち会えない | 立ち会いたいが費用も抑えたい | 家族だけでゆっくりお別れしたい |
費用の目安は、鎌倉新書「ライフドット」の解説記事によるものです[12]。天候で船が出せない日もあるため、乗船する散骨では延期になった場合の扱いも確認しておきましょう。
散骨は法律でどう扱われているか
散骨を直接定めた法律はありません。墓地埋葬法は、遺骨を墓や納骨堂に納めること(埋蔵・収蔵)や改葬を定めていますが、散骨については定めていません[1]。
東京都保健医療局の案内では、国は「墓地、埋葬等に関する法律においてこれを禁止する規定はない」との見解を示しているとしています。また、散骨は法に規定されていない行為のため法による手続きはなく、念のため地元の自治体に確認するよう勧めています[5]。
厚生労働省が公表しているガイドライン
厚生労働省の「墓地・埋葬等のページ」では、厚生労働科学特別研究事業で取りまとめられた「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」を公表しています[3]。散骨事業者に向けた内容ですが、利用する側にとっても業者を選ぶ目安になります[4]。
- 焼骨は、形が分からないように粉状に砕くこと
- 陸上では、あらかじめ特定した区域で行うこと(河川・湖沼を除く)
- 海では、海岸から一定の距離以上離れた海域で行うこと
- プラスチックやビニールなどの副葬品を投下しないこと
- 契約は文書で行い、費用の明細書を契約書に添付すること
- 散骨後に散骨証明書を作成し、利用者に渡すこと
業界団体の日本海洋散骨協会も独自のガイドラインを定め、加盟事業者に、遺骨を1〜2mm程度に粉末化することや、人が立ち入れる陸地から1海里以上離れた海上で行うことなどを求めています[11]。
散骨を制限している自治体の例
国の法律では散骨を禁止していませんが、条例や指針で散骨を制限している自治体があります。散骨する場所が決まったら、その地域の自治体の情報を確認しましょう。
| 自治体 | 内容 |
|---|---|
| 埼玉県秩父市 | 環境保全条例で、墓地以外の場所での散骨を原則禁止[8] |
| 静岡県熱海市 | ガイドラインで、事業者に市内の土地から10km以上離れた海域で行うことや、夏期の散骨を控えることなどを求めている[9] |
| 静岡県伊東市 | 指針で、市内の陸地から6海里(約11.11km)以内の海域で散骨しないことなどを求めている[10] |
ここに挙げたのは一部の例です。業者に依頼する場合も、どの海域で行うのか、その地域のルールに沿っているかを確認しておくと安心です。
お墓から遺骨を取り出して散骨する流れ
今のお墓(墓じまい)から遺骨を取り出して散骨する場合は、散骨の前に、お墓の手続きと工事が必要です。墓じまいの費用については「墓じまいの費用と改葬許可の流れ」で詳しく整理しています。
家族・親族で話し合う
散骨すると遺骨は戻せません。一部を残すかどうかも含めて決めます。
市区町村に手続きを確認する
散骨のために取り出す場合の扱いは市区町村によって異なります。
墓地の管理者に相談する
遺骨の取り出し・墓石の撤去
閉眼供養を行い、石材店が遺骨を取り出して墓石を撤去します。
散骨業者に依頼する
粉骨を含めて依頼するか、別に頼むかを決めます。
散骨・散骨証明書を受け取る
全体:お墓の手続きと工事の分、散骨だけの場合より時間がかかります
墓石の撤去を含めた全体の費用は、改葬先に海洋散骨を選んで試算できます。
散骨業者の見積もりで確認したいこと
厚生労働省が公表しているガイドラインの項目に沿って、次の点を確認しましょう[4]。
- 料金に含まれるもの:粉骨・献花・乗船人数・散骨証明書が含まれるか。追加料金がかかる条件は何か。
- 約款と契約書:契約内容を書いた約款が公表されているか。契約は文書で行い、費用の明細書を受け取れるか。
- 散骨する場所:どの海域で行うのか。地域の条例や指針に沿っているか。
- 粉骨の方法:形が分からない程度まで粉骨するか。
- 散骨証明書:散骨した日時や場所を書いた証明書を受け取れるか。
- 解約・延期の扱い:天候で出航できない場合や、解約した場合の扱いが約款に書かれているか。
散骨で後悔しないために
散骨した遺骨は取り戻せません。「お参りする場所がほしい」と後から感じることもあるため、次のような選択肢もあわせて考えておきましょう。
- 遺骨の一部を手元に残す(手元供養)
- 遺骨の一部を永代供養墓や樹木葬に納める
- 散骨した海域を記録した証明書を、家族で保管しておく
お参りの場所を残す方法としては、永代供養や樹木葬もあります。費用だけでなく、家族が後からどう供養したいかを話し合ってから決めましょう。


