親が要介護の状態になり、「仕事を一時的に休んで介護の体制を整えたい」と考えたとき、収入が止まる不安は大きいものです。介護休業給付金は、雇用保険から休業開始時の賃金の67%が、同じ家族について通算93日まで支給される制度です[1]。
この記事では、申請の流れ・支給額の計算・家族がつまずきやすいポイントを、ハローワークや厚生労働省の情報をもとに整理します。
親子ナビ編集部は労務・社会保険の専門家ではありません。具体的な申請の判断は、勤務先の人事担当・社会保険労務士・最寄りのハローワークにご相談ください。
介護休業給付金とは
介護休業給付金は、雇用保険の被保険者が、要介護状態にある家族を介護するために介護休業を取得した場合に支給される給付金です。根拠は雇用保険法第61条の4[3]で、介護休業そのものの仕組みは育児・介護休業法で定められています[4]。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 支給額 | 休業開始時賃金日額×支給日数×67% |
| 支給日数 | 同じ家族について通算93日まで。3回まで分割して取得できる |
| 対象家族 | 配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫 |
※出典:ハローワーク「雇用継続給付(介護休業給付)」[1]
「要介護状態」とは
介護休業の対象となる「要介護状態」は、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態です[4]。介護保険の要介護認定とは別の基準で判断されるため、要介護認定を受けていなくても対象になる場合があります。具体的な判断基準は、厚生労働省の介護休業制度の案内や勤務先に確認しましょう。
育児休業との違い
介護休業は、長期間にわたって自分で介護を続けるための休業ではなく、介護の体制を整えるための休業として設計されています。そのため、日数は通算93日までと決められています。休業中に介護保険サービスの利用開始や、きょうだいとの分担の調整などを進めることが大切です。
支給額の計算と月給別の目安
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
休業開始時賃金日額は、原則として休業開始前6か月間の賃金(賞与を除く)の合計を180で割った額です[1]。給付は、休業開始日から1か月ごとの「支給単位期間」に区切って計算されます。
| 休業前の月給 | 賃金日額(目安) | 30日分の支給額(目安) | 93日分の合計(目安) |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 約6,667円 | 約13.4万円 | 約41.5万円 |
| 30万円 | 約10,000円 | 約20.1万円 | 約62.3万円 |
| 40万円 | 約13,333円 | 約26.8万円 | 約83.1万円 |
| 50万円 | 約16,667円 | 約33.5万円 | 約103.9万円 |
※上の表は、上の計算式[1]に当てはめた単純計算です(出典の数字から編集部が計算。月給は計算例(仮の数字))。毎月の賃金が一定で、休業中に会社から賃金が支払われない場合を想定しています。実際の支給額は、休業前6か月の賃金の実績と支給単位期間の日数で決まります。
上限額と下限額(2026年8月1日から)
休業開始時の賃金月額には上限と下限があり、毎年8月1日に改定されます。2026年8月1日からの額は次のとおりです[2]。
| 項目 | 2026年7月31日まで | 2026年8月1日から |
|---|---|---|
| 賃金月額の上限 | 532,200円 | 546,600円 |
| 賃金月額の下限 | 90,420円 | 96,090円 |
| 支給額の上限(1支給単位期間) | 356,574円 | 366,222円 |
賃金が上限を超える人は、上限額をもとに計算されます。次の改定は2027年8月1日の予定です。申請の時点の額をハローワークで確認してください。
休業中に会社から賃金が出る場合
休業中に会社から賃金が支払われた場合、その賃金と給付金(賃金日額×支給日数×67%)の合計が「賃金日額×支給日数」の80%を超えると、超えた分が給付金から減額されます[1]。会社独自の上乗せ制度がある場合は、給付金への影響も人事担当に確認しましょう。
分割して取得する場合
介護休業は同じ家族について3回まで分割して取得でき、合計93日までが給付の対象です[1]。
たとえば「退院直後の体制づくり」「状態が変わったときの調整」「看取りの時期」など、親の状態の変化に合わせて分けて使うことができます。最初に93日をまとめて使い切らないことも、選択肢として考えておきましょう。
受給条件のチェックリスト
| 条件 | 内容 | 確認先 |
|---|---|---|
| 雇用保険の被保険者 | 休業を開始する時点で雇用保険に加入している | 給与明細の雇用保険料の欄 |
| 被保険者期間 | 休業開始前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上(または賃金支払いの基礎となった時間数が80時間以上)ある月が12か月以上[1] | 勤務先の人事担当 |
| 対象家族が要介護状態 | 2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態 | 主治医・ケアマネジャー |
| 介護休業を取得している | 会社に申し出て、実際に休業している | 勤務先の介護休業規程 |
有期雇用の人も対象になりえます。 2022年4月1日の法改正で、有期雇用労働者の介護休業の取得要件のうち「同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること」が廃止されました[6](ただし、労使協定により勤続1年未満の人を対象外にできる場合があります)。
あわせて、取得予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに労働契約が満了することが明らかでないことなどの要件があります。まずは人事担当やハローワークに確認しましょう。
申請の5ステップ
申請は原則として事業主(会社)を通じてハローワークに行います(本人が申請することもできます)[1]。
親の状態を確認する
「2週間以上の常時介護が必要な状態か」を相談します。介護保険の要介護認定がまだなら、市区町村で申請します。
会社に介護休業を申し出る
休業開始予定日の2週間前までに申し出なかった場合、会社が開始日を指定できるとされています。早めに書面で申し出ましょう。
休業する
休業中も、健康保険・厚生年金の保険料や住民税の支払いは続きます。
休業終了後に申請する
各休業の終了日の翌日から2か月を経過する日の属する月の末日までに提出します。
支給決定・振込
審査の後、支給が決定されると指定の口座に振り込まれます。分割して休業した場合は、休業ごとに申請します。
介護休業と給付金の主な期限
起点
介護休業(開始予定日・終了日)
開始予定日の2週間前まで
会社に介護休業を申し出る(遅れると会社が開始日を指定できる)[4]
育児・介護休業法
終了日の翌日から2か月を経過する日の属する月の末日まで
ハローワークへ支給申請する[1]
分割して休業した場合は、休業ごとに申請します。
会社が手続きに慣れていない場合
介護休業は社内で前例が少なく、人事担当にとってもはじめての手続きということがあります。手続きが滞りそうな場合は、ハローワークで必要書類や記入例を確認し、人事担当と共有するとスムーズです。
介護休業給付金・介護休暇・高額介護合算療養費の違い
| 比べる項目 | 介護休業給付金 | 介護休暇 | 高額介護合算療養費 |
|---|---|---|---|
| 目的 | まとまった休業中の所得の補償 | 通院の付き添いなど短期の休暇 | 医療費と介護費の自己負担が重いときの軽減 |
| お金の面 | 休業開始時賃金の67% | 有給か無給かは会社の規程による | 年間の自己負担の上限を超えた分 |
| 期間・回数 | 通算93日・3回まで | 年5日(対象家族が2人以上なら10日) | 毎年8月〜翌年7月の1年単位 |
| 申請先 | 会社経由でハローワーク | 勤務先 | 加入している医療保険・市区町村 |
※出典:介護休業給付金はハローワーク[1]、介護休暇は育児・介護休業法第16条の5[4]、高額介護合算療養費は厚生労働省の資料[5]によります。
「まとまった休業=介護休業給付金」「1日単位や時間単位の付き添い=介護休暇」「医療費と介護費の両方が重い=高額介護合算療養費」と整理すると、使い分けがわかりやすくなります。
介護休業給付金と傷病手当金
自分自身が体調を崩して働けなくなった場合は、健康保険の傷病手当金の対象になることがあります。介護休業給付金とは目的が異なるため、同じ期間に両方を受けられるかなどは、加入している健康保険とハローワークに確認してください。
介護のために退職した場合
家族の介護を理由に退職した場合、雇用保険の基本手当(失業給付)で「特定理由離職者」として扱われる場合があります。給付制限の有無などは離職理由の判断によるため、離職票を持ってハローワークで確認してください。
休業前に「会社・親・自分」3方向の準備
会社への準備
法律上は休業開始の2週間前までに申し出れば足ります[4]。ただ、実際には早めに上司・人事に相談しておくと、業務の引き継ぎがしやすくなります。会社独自の上乗せ制度がある場合もあるので、就業規則や育児介護休業規程を事前に読んでおきましょう。
親の介護体制の準備
休業前に、ケアマネジャーとの面談・要介護認定の申請・必要な介護サービスの手配を進めておくと、休業期間を「家族にしかできないこと」に使えます。
自分の生活の準備
給付金の入金までに時間がかかることを前提に、生活費を確保しておきましょう。住宅ローンや家賃などの固定費、休業中も続く社会保険料と住民税を試算し、配偶者がいれば家計の見通しを共有しておくと安心です。
介護休業中に親のケア体制をどう作るか
介護休業は通算93日まで。この期間に、休業が終わった後も続けられる介護の体制を整えることが目的です。家族だけで抱え込まず、制度やサービスを組み合わせましょう。
- 介護保険サービスの利用:介護保険の申請の流れや訪問介護の内容を確認し、ケアマネジャーとケアプランを作ります。
- 見守りの仕組み:職場に戻った後も親の様子を確認できるよう、見守りサービスの導入を検討します。
- 食事の支え:毎日の食事の用意が負担になる場合は、高齢者向け宅配食サービスを親の状態に合わせて比べます。
- 仕事との両立の制度:介護休暇、短時間勤務などの措置、所定外労働の制限など、育児・介護休業法の制度を組み合わせます。
- 地域の相談窓口:地域包括支援センターでは、介護の相談を無料で受け付けています。
「自分一人で全部背負う」前提を手放し、制度・行政・民間サービス・家族で役割を分けることが、介護を続けていくための大きなポイントです。迷ったら、まずは勤務先の人事担当やハローワークに相談してみてください。


