介護保険の申請の流れ7ステップ【2026年版】要介護認定の期間・必要書類・費用まで

結論から言うと、介護保険サービスを使うには「市区町村窓口での申請 → 認定調査・主治医意見書 → 一次・二次判定 → 認定結果通知 → ケアプラン作成」という7ステップを踏みます。申請から認定結果が出るまでの期間は原則30日以内とされていますが、実際は40〜60日かかるケースが多いのが実情です(厚生労働省「介護保険制度の概要」より)。自己負担はサービス費の1〜3割。私たち編集部は行政の専門家ではありませんが、初めて介護保険を申請する家族向けに、各ステップで「誰が・何を・どこで」やるのかを公的データに沿って整理しました。

介護保険制度の基本——対象年齢・自己負担・利用上限

介護保険は、2000年4月にスタートした社会保険制度で、市区町村が保険者となり、40歳以上の全国民が保険料を負担する仕組みです(厚生労働省「介護保険制度の概要」)。要介護・要支援と認定されると、訪問介護・通所介護・福祉用具レンタル・施設入所など、さまざまなサービスを原則1〜3割の自己負担で利用できます。

対象になるのは「65歳以上」と「40〜64歳の特定疾病該当者」

介護保険のサービスを利用できる対象者は次の2区分です。

  • 第1号被保険者(65歳以上): 原因を問わず、要介護・要支援状態になれば申請可能
  • 第2号被保険者(40〜64歳): 末期がん・若年性認知症・脳血管疾患・パーキンソン病関連疾患など16の特定疾病が原因で要介護状態になった場合に限り申請可能

多くの家族が介護保険を意識し始めるのは、親が65歳を過ぎて足腰が弱ってきた、あるいは認知症の症状が出始めたタイミングです。ただし「まだ大丈夫」と先送りにしているうちに転倒・骨折で一気に要介護3になるケースも珍しくないため、「ちょっと不安」と感じた段階で地域包括支援センターに一度相談しておくのが安全です。

自己負担は1割が原則・所得が高ければ2割か3割

介護保険サービス利用時の自己負担は次のとおりです(2026年5月現在)。

所得区分 自己負担割合 目安(単身・年金収入)
一般所得 1割 年金収入280万円未満
一定以上所得 2割 年金収入280万円以上
現役並み所得 3割 年金収入340万円以上

たとえば1ヶ月のサービス利用額が20万円で1割負担なら、自己負担は2万円です。さらに月の自己負担額には「高額介護サービス費」の上限があり、所得区分ごとに月44,400円〜140,100円を超えた分は払い戻されます。

ステップ1: 申請前の準備——本人意向の確認と書類集め

申請手続きそのものは難しくありませんが、その前段で家族が確認しておくべきことが3つあります。

  • 本人の意向確認: 介護保険を申請されることを本人が嫌がるケースは多い。「自分はまだ介護される側ではない」という心理に配慮し、「将来のため、選択肢を広げるため」と説明する
  • 主治医の確認: ステップ3で主治医意見書が必要になる。かかりつけ医がいない場合は、申請前に近隣のクリニックを受診しておく
  • 書類の準備: 介護保険被保険者証(65歳到達月に郵送済み)、マイナンバーカードまたは通知カード、本人の印鑑

40〜64歳の第2号被保険者の場合は、被保険者証ではなく医療保険の被保険者証が必要です。

ステップ2: 市区町村窓口での申請

申請窓口は本人が住民登録している市区町村の介護保険課(または高齢福祉課)です。本人が直接行けない場合、家族・成年後見人・地域包括支援センター・居宅介護支援事業所のケアマネジャーが代行できます。

窓口で「要介護認定・要支援認定 申請書」を記入します。記入項目は次のとおり。

  • 本人氏名・住所・生年月日・被保険者番号
  • 主治医の氏名・医療機関名・所在地
  • 申請区分(新規・更新・区分変更)
  • 申請者(家族が代行する場合は続柄)

申請書はその場で受理され、控えが渡されます。手数料は無料です。郵送やオンライン申請を受け付けている自治体も増えているため、平日窓口に行けない場合は事前に自治体ウェブサイトを確認してください。

ステップ3: 主治医意見書の準備

市区町村が申請を受理すると、申請書に書かれた主治医に対して「主治医意見書」の作成依頼書を直接送付します。家族が病院に依頼書を持ち込む必要はありません。

意見書には、本人の傷病名・症状の経過・特別な医療(透析・点滴等)の有無・認知症の状況・身体機能などが医学的に記載されます。作成費用は介護保険から医療機関へ支払われるため、家族の負担はありません。

意見書作成のために、主治医が本人を改めて診察するケースもあります。普段あまり通院していない場合は、申請前に一度受診して状況を伝えておくと作成がスムーズです。意見書の作成期間は通常1〜3週間ですが、医師の繁忙期や遠方の専門医に依頼している場合は1ヶ月以上かかることもあります。

ステップ4: 認定調査員の訪問調査(74項目)

申請受理後、市区町村職員または委託された調査員が本人の自宅(入院中なら病院)を訪問し、約1時間かけて全国共通の74項目の認定調査を行います(厚生労働省「認定調査票」)。

調査項目は大きく次の5群に分かれます。

  • 身体機能・起居動作: 寝返り、起き上がり、立ち上がり、歩行、視力、聴力など13項目
  • 生活機能: 食事、排尿、排便、口腔清潔、洗顔、整髪、衣服着脱など12項目
  • 認知機能: 意思の伝達、記憶、生年月日や年齢の理解、短期記憶など9項目
  • 精神・行動障害: 被害妄想、作話、感情不安定、徘徊、不潔行為など15項目
  • 社会生活への適応・特別な医療: 薬の内服、金銭管理、買い物、簡単な調理、過去14日間の医療処置など25項目

調査時に家族が同席するメリット

本人だけだと「できます」「大丈夫です」と実態より良く答えてしまう傾向があります。家族が同席し、調査員に対して「実際は週3回失禁している」「夜中の徘徊が月2回ある」など、客観的な事実を伝えることで適切な判定につながります。

調査の前に、普段の困りごとをメモにまとめておくことを強くおすすめします。「最近の入浴頻度」「服薬の自己管理ができているか」「買い物は誰がしているか」など、細かい事実が判定の精度を左右します。

ステップ5: 一次判定(コンピュータ判定)

74項目の認定調査結果はコンピュータに入力され、全国一律の判定ロジックで「要介護認定等基準時間」が算出されます。これを一次判定と呼びます。

要介護認定等基準時間とは、その人に1日あたり必要となる介護サービス時間の推計値で、次の8区分に振り分けられます。

区分 必要介護時間の目安
非該当(自立) 25分未満
要支援1 25〜32分未満
要支援2 / 要介護1 32〜50分未満
要介護2 50〜70分未満
要介護3 70〜90分未満
要介護4 90〜110分未満
要介護5 110分以上

あくまで目安時間であり、実際にこの時間しかサービスを受けられないわけではありません。一次判定の結果は次の二次判定(介護認定審査会)に回されます。

ステップ6: 二次判定(介護認定審査会)

二次判定は、保健・医療・福祉の専門家5名程度で構成される介護認定審査会が、一次判定結果と主治医意見書、認定調査の特記事項を総合的に検討して最終的な要介護度を決定する場です。

審査会では、コンピュータ判定では拾いきれなかった「認知症の周辺症状」「医療的ケアの必要性」「介護者の有無による生活困難度」などが考慮され、必要に応じて要介護度が引き上げ(または引き下げ)られます。

家族や本人が審査会に出席することはできませんが、認定調査時の特記事項と主治医意見書の内容が判定の決め手になるため、調査時に困りごとをきちんと伝えること、主治医に普段の状態を共有しておくことがここで効いてきます。

ステップ7: 認定結果通知と区分(要支援1〜要介護5)

審査会の結論が出ると、申請から原則30日以内に市区町村から認定結果通知書と新しい介護保険被保険者証が郵送されます(介護保険法第27条)。

認定区分は次の8段階です。

区分 状態の目安
非該当(自立) 介護保険サービス利用不可。地域支援事業の対象になることはある
要支援1 身の回りの基本動作はほぼ自立。掃除・買い物などに一部支援が必要
要支援2 身の回りの動作の一部に介助が必要。状態維持・改善の余地あり
要介護1 立ち上がり・歩行が不安定。排せつ・入浴に部分介助
要介護2 立ち上がり・歩行に介助。排せつ・入浴に介助、軽度の認知症
要介護3 立ち上がり・歩行が自力で困難。排せつ・入浴・衣服着脱で全介助、認知症で日常に支障
要介護4 日常生活全般に全面介助。認知症で意思疎通困難な場面が多い
要介護5 寝たきり状態。意思疎通も困難で全介助が必要

有効期間は新規申請の場合原則6ヶ月(更新申請後は原則12ヶ月、最長48ヶ月)。期間満了の60日前から更新申請が可能です。

認定結果別の支給限度額一覧

各区分には1ヶ月あたり利用できる介護サービス費の上限(支給限度基準額)が定められています(2026年5月現在の標準単価)。

区分 支給限度額(月額) 1割負担時の上限
要支援1 50,320円 5,032円
要支援2 105,310円 10,531円
要介護1 167,650円 16,765円
要介護2 197,050円 19,705円
要介護3 270,480円 27,048円
要介護4 309,380円 30,938円
要介護5 362,170円 36,217円

限度額を超えてサービスを利用した分は全額自己負担(10割)になります。住宅改修費(上限20万円・生涯1回)・福祉用具購入費(上限10万円/年)・特定施設入居費などは別枠で支給されます。

ケアプラン作成とサービス開始

認定結果が「要支援1〜2」なら地域包括支援センター、「要介護1〜5」なら居宅介護支援事業所のケアマネジャーがケアプラン(介護サービス計画書)を作成します。ケアプラン作成費用は全額介護保険から支払われるため、家族の負担はゼロです。

ケアプランには次のような内容が盛り込まれます。

  • 本人と家族が望む生活の目標
  • 利用するサービスの種類・回数・事業者
  • 1ヶ月の予算と自己負担額の見込み
  • 緊急時対応・モニタリング頻度

ケアマネジャーとの相性は介護生活の質を大きく左右します。事業所は本人・家族が自由に選べますし、後から変更も可能。最初に紹介された人としっくりこなければ、地域包括支援センターに相談して別のケアマネに代えてもらうこともできます。

申請が通らないケース・不服申立て

申請しても「非該当(自立)」と判定されることや、家族が想定したより軽い区分(例: 要介護2を期待していたが要介護1)になることはあります。納得できない場合の選択肢は2つです。

  • 区分変更申請: 認定後に状態が悪化した場合、有効期間中でも再度認定を受け直せる(再度74項目の調査が入る)
  • 不服申立て(審査請求): 認定結果通知から3ヶ月以内に都道府県の介護保険審査会に審査請求する。ただし結論が出るまで数ヶ月かかり、覆る確率は低め

現実的には、区分変更申請のほうが早く・確実に再判定できるためおすすめです。次の認定時に困らないよう、日々の状態の変化を介護日誌などで記録しておくと、調査員に正確に伝えられます。

よくある質問

Q. 申請から結果が出るまでの期間は本当に30日ですか?

A. 介護保険法では原則30日以内と定められていますが、実際は主治医意見書の作成遅延・認定審査会の開催スケジュール・申請集中時期などで40〜60日かかることが多いです。急いでサービス利用を始めたい場合は「暫定ケアプラン」を組み、認定結果が出る前にサービス利用を開始することも可能(認定が出れば遡及適用される)。

Q. 申請を本人が嫌がります。どう説得すればいいですか?

A. 「介護保険」という言葉に強い抵抗感を示す方は多いです。「将来のための準備」「使わなくても保険証だけ持っておくのは安心材料」「困ってからでは間に合わない」など、選択肢を増やす意味合いで伝えるのが有効です。本人の同意を得ずに家族のみで申請することも法律上は可能ですが、認定調査で本人の協力が得られず適切な判定が出ないリスクがあります。

Q. 認定結果が出る前にサービスを使えますか?

A. 暫定ケアプランを作成すれば申請日からサービス利用可能です。後日認定結果が出たときに、想定区分より軽く判定されると限度額超過分が自己負担になるリスクがあるので、ケアマネジャーと相談し控えめなプランから始めるのが安全です。

Q. 県外の親を呼び寄せて同居する場合、介護保険はどうなりますか?

A. 介護保険は住民票がある市区町村が保険者です。住民票を移せば移動先の市区町村が新たな保険者となります。要介護認定の有効期間中なら、移動後の市区町村で「受給資格証」を提示することで認定を引き継ぐことが可能(再認定不要)。

Q. 65歳未満で介護が必要になった場合は?

A. 40〜64歳の方は、16の特定疾病(末期がん・若年性認知症・脳血管疾患・パーキンソン病関連疾患・関節リウマチ・初老期における認知症など)が原因で要介護状態になった場合に限り、介護保険を申請できます。それ以外の原因(交通事故等)の場合は障害福祉サービスや医療保険の対象になります。

こんなときは地域包括支援センターへ

  • 申請の手続きがよくわからない — 中学校区ごとに設置された地域包括支援センターが無料で相談に乗ってくれる
  • 主治医がいない・どの医師に意見書を頼めばいいかわからない — 地域の医療機関情報を提供してもらえる
  • 本人が申請を強く拒否している — 専門職(社会福祉士・主任ケアマネ・保健師)が訪問して説得を手伝ってくれる
  • 緊急で在宅生活が困難になった — ショートステイ等の緊急利用調整が可能

※ 私たち編集部は行政の専門家ではありません。本記事は厚生労働省「介護保険制度の概要」「認定調査票」など公開資料に基づく一般情報のまとめであり、個別の手続きは必ず各市区町村の介護保険課または地域包括支援センターにご確認ください。