介護保険のサービスを使うには、市区町村で「要介護認定」を受ける必要があります。流れは「申請 → 主治医意見書 → 訪問調査 → 一次判定 → 二次判定 → 結果通知 → ケアプラン作成」の7ステップです。
申請から認定の通知までは原則30日以内とされています[7]。自己負担はサービス費用の原則1割(所得によって2割・3割)です[6]。
親子ナビ編集部は行政の専門家ではありません。この記事は厚生労働省の公開資料と法令をもとにした一般的な情報です。個別の手続きは、お住まいの市区町村の介護保険の窓口や地域包括支援センターに確認してください。
申請から利用開始までの7ステップ
申請前の準備
本人の意向、主治医、必要書類を確認します。
市区町村の窓口で申請する
主治医意見書
作成の費用を家族が負担する必要はありません。
認定調査(訪問調査)
調査員が心身の状態を聞き取ります。家族が同席して具体的な事実を伝えます。
一次判定(コンピュータ判定)
要介護認定等基準時間を推計します。
二次判定(介護認定審査会)
一次判定の結果や主治医意見書などをもとに、要介護度を判定します。
認定結果の通知・ケアプランの作成
結果をもとにケアプランを作り、サービスを始めます。
全体:申請から結果の通知まで原則30日以内(介護保険法第27条)
介護保険制度の基本
介護保険は、市区町村が保険者となり、40歳以上の人が保険料を納める社会保険制度です[1]。要介護・要支援と認定されると、訪問介護・通所介護(デイサービス)・福祉用具の貸与・施設への入所などのサービスを、原則1割の自己負担で利用できます。
対象は「65歳以上」と「40〜64歳で特定疾病がある人」
- 第1号被保険者(65歳以上):原因を問わず、介護や支援が必要になれば申請できます。
- 第2号被保険者(40〜64歳):末期がん、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、初老期における認知症、脳血管疾患、パーキンソン病関連疾患など、16の特定疾病が原因の場合に限り申請できます[4]。
親が65歳を過ぎて足腰が弱ってきた、物忘れが目立ってきたといったタイミングで、「少し不安」と感じた段階で地域包括支援センターに相談しておくと、いざという時に動きやすくなります。
自己負担は原則1割、所得によって2割・3割
| 負担割合 | 主な基準(単身世帯の場合) |
|---|---|
| 1割 | 下の2割・3割の基準にあてはまらない人 |
| 2割 | 合計所得金額160万円以上、かつ年金収入+その他の合計所得金額が280万円以上 |
| 3割 | 合計所得金額220万円以上、かつ年金収入+その他の合計所得金額が340万円以上 |
夫婦世帯(65歳以上が2人以上)の場合は、2割の基準が346万円以上、3割の基準が463万円以上です[1]。実際の負担割合は、市区町村から届く「介護保険負担割合証」で確認できます。
1か月の自己負担が一定の上限を超えると、超えた分が「高額介護サービス費」として払い戻されます。上限額は所得の区分によって異なり、介護サービス情報公表システムでは月15,000円〜140,100円の範囲で示されています[6]。
ステップ1 申請前の準備
申請の手続き自体は難しくありませんが、その前に家族で確認しておきたいことが3つあります。
- 本人の意向を確認する:「自分はまだ介護される側ではない」と抵抗を感じる人も多いため、「将来のため」「選択肢を広げるため」と説明しましょう。
- 主治医を確認する:ステップ3で主治医意見書が必要になります。かかりつけ医がいない場合は、申請前に近くの医療機関を受診しておくとスムーズです。
- 書類を準備する:介護保険被保険者証、本人確認書類、マイナンバーがわかるものなど。必要書類は市区町村によって異なるので、事前に確認しましょう。
40〜64歳の人は、介護保険被保険者証の代わりに医療保険の資格を確認できるものが必要です。
ステップ2 市区町村の窓口で申請する
申請先は、本人の住民票がある市区町村の介護保険の窓口です[5]。本人が行けない場合は、家族のほか、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所などに代行してもらうこともできます。
申請書には、本人の情報、被保険者番号、主治医の氏名・医療機関などを記入します。申請に手数料はかかりません。
郵送やオンラインでの申請を受け付けている自治体もあるので、平日に窓口へ行けない場合は自治体のウェブサイトを確認しましょう。
ステップ3 主治医意見書
申請を受けた市区町村は、申請書に書かれた主治医に主治医意見書の作成を依頼します[2]。意見書には、病名や症状の経過、認知症の状況、心身の機能などが記載されます。作成の費用を家族が負担する必要はありません。
普段あまり受診していない場合は、主治医に最近の状態を伝えておくと、実態に合った意見書になりやすくなります。
ステップ4 認定調査(訪問調査)
市区町村の職員や委託を受けた調査員が、本人の自宅(入院中なら病院)を訪問し、心身の状態を聞き取ります。調査は全国共通の基本調査(74項目)と、調査員が書く特記事項からなります[3]。
基本調査では、寝返り・起き上がり・歩行などの身体機能、食事・排せつ・着替えなどの生活機能、記憶や意思の伝達などの認知機能を確認します。あわせて、行動の状態、服薬や金銭管理などの社会生活への適応、過去14日間に受けた特別な医療なども確認します。
調査には家族が同席する
ステップ5 一次判定(コンピュータ判定)
認定調査の結果と主治医意見書の一部をもとに、コンピュータで「要介護認定等基準時間」を推計します。これが一次判定です[3]。
| 区分 | 要介護認定等基準時間 |
|---|---|
| 要支援1 | 25分以上32分未満 |
| 要支援2・要介護1 | 32分以上50分未満 |
| 要介護2 | 50分以上70分未満 |
| 要介護3 | 70分以上90分未満 |
| 要介護4 | 90分以上110分未満 |
| 要介護5 | 110分以上 |
この時間は介護の必要性をはかる「ものさし」で、実際に家庭で行われる介護の時間や、受けられるサービスの時間と直接結びつくものではありません。要支援2と要介護1は、状態の安定性や認知機能などをふまえて判定されます。
ステップ6 二次判定(介護認定審査会)
保健・医療・福祉の学識経験者で構成される介護認定審査会が、一次判定の結果と主治医意見書、認定調査の特記事項などをもとに審査し、要介護度を判定します[2]。
本人や家族が審査会に出席することはありません。そのため、訪問調査で困りごとを具体的に伝えること、主治医に普段の状態を共有しておくことが大切になります。
ステップ7 認定結果の通知
| 区分 | 状態の目安 |
|---|---|
| 非該当(自立) | 介護保険のサービスは使えない。市区町村の介護予防の事業などを利用できる場合がある |
| 要支援1・2 | 日常生活の一部に支援が必要。状態の維持・改善が見込まれる |
| 要介護1〜5 | 日常生活に介護が必要。数字が大きいほど介護の必要度が高い |
認定の有効期間
| 種類 | 原則の期間 | 設定できる範囲 |
|---|---|---|
| 新規の認定 | 6か月 | 3〜12か月 |
| 更新の認定 | 12か月 | 3〜36か月(要介護度が変わらない場合は48か月まで) |
更新の申請は、有効期間が終わる日の60日前からできます[8]。期限切れにならないよう、ケアマネジャーと時期を確認しておきましょう。
要介護認定の主な期限
起点
要介護認定の申請日
原則30日以内
認定結果の通知(効力は申請日にさかのぼる)[7]
介護保険法 第27条
原則6か月(3〜12か月)
新規認定の有効期間[8]
介護保険法施行規則
有効期間が終わる日の60日前から
更新の申請ができる[8]
介護保険法施行規則
結果に納得できない場合の審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から3か月以内です(介護保険法第192条)。
支給限度額(区分支給限度基準額)
在宅サービスには、要介護度ごとに1か月に使える上限額が決められています。介護サービス情報公表システムでは、次の金額が示されています(1単位10円で計算した目安。地域によって1単位あたりの金額は異なります)[6]。
| 区分 | 1か月の支給限度額 | 1割負担の場合の自己負担 |
|---|---|---|
| 要支援1 | 50,320円 | 5,032円 |
| 要支援2 | 105,310円 | 10,531円 |
| 要介護1 | 167,650円 | 16,765円 |
| 要介護2 | 197,050円 | 19,705円 |
| 要介護3 | 270,480円 | 27,048円 |
| 要介護4 | 309,380円 | 30,938円 |
| 要介護5 | 362,170円 | 36,217円 |
限度額を超えて利用した分は、全額自己負担になります。住宅改修や特定福祉用具の購入は、これとは別枠で支給されます(上限あり)。
介護保険の訪問介護で頼めること・頼めないことと、保険で足りない場面の補い方は「訪問介護でしてもらえること」で整理しています。
ケアプランの作成とサービス開始
認定結果が「要支援1・2」なら地域包括支援センターなど、「要介護1〜5」なら居宅介護支援事業所のケアマネジャーがケアプラン(介護サービス計画)を作成します。
居宅介護支援(ケアプランの作成)は全額が介護保険から支払われるため、利用者の自己負担はありません。
ケアプランには、本人と家族が望む生活の目標、利用するサービスの種類・回数・事業者、自己負担の見込みなどが盛り込まれます。ケアマネジャーとの相性は介護生活の質を左右します。事業所は本人・家族が選べ、後から変更することもできます。
結果に納得できないとき
想定より軽い区分になったり、「非該当」と判定されたりすることもあります。その場合の方法は2つです。
- 区分変更の申請:状態が変わった場合などに、有効期間の途中でも認定のやり直しを申請できます(あらためて調査が行われます)。
- 審査請求:認定の処分があったことを知った日の翌日から3か月以内に、都道府県の介護保険審査会に審査請求ができます(介護保険法第192条)[7]。
どちらがよいかは状況によるため、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しましょう。日々の状態の変化を記録しておくと、次の調査で正確に伝えられます。
こんなときは地域包括支援センターへ
- 申請の手続きがよくわからない:地域包括支援センターで無料で相談できます。
- 主治医がいない:地域の医療機関の情報を教えてもらえることがあります。
- 本人が申請を強く拒んでいる:専門職が一緒に考えてくれます。
- 急に在宅での生活が難しくなった:利用できるサービスの調整を相談できます。
介護が始まったら、在宅の中心となる訪問介護の内容や、離れて暮らす親の見守りサービスもあわせて確認しておきましょう。毎日の食事の用意が心配な場合は、高齢者向け宅配食サービスを親の状態に合わせて比べられます。施設への入居を考える場合は、介護準備の記事一覧から情報を探せます。


