親が借りた土地の上に建てた家(借地上の建物)を相続したものの、住む予定がない。そんなときに問題になるのが、借地権の売却には地主の承諾が必要という点です。
この記事では、借地権の売り方を4つに分けて比べ、地主の承諾が得られないときに使える裁判所の手続き(借地非訟)と、価格の考え方を、民法・借地借家法と裁判所・国税庁の資料をもとに整理します。
なお、親子ナビ編集部は法律・不動産の専門家ではありません。具体的な判断は、弁護士・司法書士・不動産会社(宅地建物取引士)に確認してください。
借地権とは
借地借家法では、借地権を「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と定めています(第2条)。存続期間は30年で、契約でこれより長い期間を定めたときはその期間です(第3条)[2]。
借地権の多くは土地の賃借権です。土地は地主のもの、建物は借地人(親から相続した人)のもの、という形になります。
借地借家法の施行前の旧借地法の規定によって生じた効力は、施行後も妨げられないとされています(借地借家法 附則第4条)[2]。裁判所の手続きにも、平成4年(1992年)8月1日以降に設定された借地権にだけ適用されるものがあります[3]。契約がいつ結ばれたかも、契約書で確認しておきましょう。
売るには地主の承諾が必要
借地上の建物を売ると、建物と一緒に土地の賃借権も買主に移ります。民法第612条では、賃借人は賃貸人の承諾を得なければ賃借権を譲り渡すことができないとしています[1]。
東京地方裁判所の案内でも、借地上の建物を譲渡するときは、土地の賃借権も移転するため土地所有者の承諾を得る必要があると説明されています[3]。
借地権の4つの売り方
| 比べる項目 | 地主に売る | 承諾を得て第三者に売る | 底地と一緒に売る | 借地権を扱う業者に売る |
|---|---|---|---|---|
| 地主の承諾 | 地主が買主なので話し合いで決める | 必要 | 地主と共同で売るので合意が前提 | 必要(業者が買主でも同じ) |
| 向いている場合 | 地主が土地を一体で使いたい | 立地がよく、買い手が見込める | 地主も土地を手放したい | 地主との交渉に時間をかけにくい |
| 確認したいこと | 価格の根拠 | 承諾の条件(承諾料など)を書面で | 代金の分け方 | 査定の根拠と承諾の取り方 |
どの売り方でも、地主との話し合いが出発点です。地主が土地を一体で使いたいと考えていれば、地主への売却がまとまりやすくなります。第三者や業者に売る場合は、承諾の条件を書面で残しておくと、後の行き違いを防げます。
借地権の買い取りを扱う会社にも、査定を申し込めます(訳あり物件買取センターで借地権の査定を申し込む
)。
地主が承諾しないとき(借地非訟)
地主が承諾しない場合でも、すぐにあきらめる必要はありません。借地借家法第19条では、第三者が借地権を取得しても地主に不利となるおそれがないのに地主が承諾しないとき、裁判所は借地人の申立てにより、地主の承諾に代わる許可を与えることができるとしています[2]。
東京地方裁判所の案内による手続きの流れは、おおむね次のとおりです[4]。
申立書を出す
第1回の審問
当事者から事情を聴きます。
鑑定委員会の現地調査
許可の可否や、承諾料・地代・建物や借地権の価格について意見を出します。
意見書を受けた審問
決定
不服があるときは、決定書の送達を受けた日から2週間以内に即時抗告ができます。
全体:多くの事件は、特段の事情がなければ概ね1年以内に終わる(東京地裁の案内)
第19条は、借地人が建物を第三者に「譲渡しようとする場合」の手続きです[2]。売買を済ませてしまう前に、弁護士などに相談しましょう。
買主が地主の承諾を得られなかった場合
建物を取得した第三者が、地主から賃借権の譲渡の承諾を得られなかったときは、その第三者は地主に対し、建物を時価で買い取るよう請求できます(借地借家法第14条、建物買取請求権)[2]。ただし、売主と買主の間で争いになりやすいため、承諾を得てから売るのが基本です。
借地権の価格の考え方
借地権には、相続税などの計算で使う評価額があります。国税庁の案内では、借地権の価額は「宅地の自用地としての価額 × 借地権割合」で計算します[5]。借地権割合は路線価図や評価倍率表に記号で示され、Aが90%、Bが80%、Cが70%、Dが60%、Eが50%、Fが40%、Gが30%です[6]。
相続した借地権を売るときの順番
- 契約書と名義を確認する:土地の賃貸借契約書、建物の登記事項証明書で、契約の内容と建物の名義を確認します。
- 建物の相続登記をする:相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が義務で、怠ると10万円以下の過料の対象です[7]。
- 地主に相談する:売却を考えている事情を伝え、地主が買い取る意向があるか、第三者への譲渡を承諾できるかを聞きます。
- 査定を比べる:借地権を扱う会社を含め、複数社に査定を依頼します。
- 承諾を書面でもらい、売買契約を結ぶ:承諾が得られない場合は、契約の前に借地非訟を検討します。


