「親の遺産に相続税はかかるのか」「かかるとしたらいくらか」。このページでは、相続税がかかるかどうかの判定から、税額の計算の手順、家族構成別の早見表、税額を下げる主な制度までを、国税庁のタックスアンサーにもとづいて説明します。
ここでの計算は、仕組みを理解するための概算です。実際の申告では、土地の評価や特例の要件の確認が必要です。申告が必要になりそうな場合は、税理士や税務署に相談してください。
相続税がかかるかどうかの判定
相続税は、遺産の額が基礎控除額を超えるときにかかります。国税庁 No.4152 によると、基礎控除額は次の式で計算します[1]。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数法定相続人の数の数え方
- 相続放棄をした人がいても、放棄がなかったものとして数えます。
- 養子は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで数えます[1]。
法定相続人が誰になるかは、民法で決まっています。配偶者は常に相続人で、子、子がいなければ父母、父母もいなければ兄弟姉妹が相続人になります。詳しくは法定相続人の範囲と相続分をご覧ください。
判定に使う「遺産の額」
基礎控除と比べるのは、次のように計算した「課税価格の合計額」です。
- 預貯金・不動産・株式などの財産の額
- +生命保険金・死亡退職金などの「みなし相続財産」(非課税枠を超える部分)
- +亡くなる前の一定期間に受けた贈与(暦年贈与の加算)
- −借入金などの債務と葬式費用
生命保険金の非課税枠は「500万円×法定相続人の数」です[5]。ただし、相続放棄をした人が受け取った保険金には、この非課税枠は使えません。
亡くなる前の贈与を加算する期間は、2026年12月31日までに亡くなった場合は3年です。2027年1月1日以後は段階的に延び、2031年1月1日以後は7年になります[8]。
土地は、市街地では路線価、それ以外では固定資産税評価額に倍率を掛けるなどの方法で評価します。路線価は国税庁のウェブサイトで調べられます。
相続税の計算手順(5ステップ)
国税庁 No.4152 の手順[1]を、5つのステップで見ていきます。
課税価格の合計額を出す
相続人ごとの課税価格を合計します。
課税遺産総額を出す
課税価格の合計額から基礎控除額を差し引きます。
法定相続分で分ける
課税遺産総額を、法定相続分どおりに分けたと仮定します。
相続税の総額を出す
分けた金額ごとに速算表で税額を計算し、合計します。
実際の取得割合で分け、控除を差し引く
相続税の総額を、実際に財産を取得した割合で各人に振り分け、配偶者の税額軽減などを差し引きます。
相続税の速算表
国税庁 No.4155 の速算表です(2026年4月1日現在の法令等)[2]。手順3で分けた金額ごとに使います。
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | − |
| 1,000万円超 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
税額は「取得金額×税率−控除額」で求めます。
計算例(仮の数字):課税価格2億円、配偶者と子2人
国税庁 No.4155 に載っている例と同じ条件で計算します[2]。
- 基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
- 課税遺産総額:2億円−4,800万円=1億5,200万円
- 法定相続分で分ける:配偶者1/2=7,600万円、子1人あたり1/4=3,800万円
- 税額を出す
- 配偶者:7,600万円×30%−700万円=1,580万円
- 子1人:3,800万円×20%−200万円=560万円(2人で1,120万円)
- 相続税の総額:1,580万円+1,120万円=2,700万円
- 実際の分け方で振り分ける:たとえば配偶者が1/2、子2人が1/4ずつ取得した場合、配偶者の負担分は1,350万円ですが、配偶者の税額軽減で0円になります。子は1人675万円、2人で1,350万円を納めます。
早見表:家族構成別の相続税の目安
次の表は、課税価格の合計額ごとに、相続人全体で納める相続税の目安を、国税庁の速算表[2]と配偶者の税額軽減[3]をもとに編集部が計算したものです(出典の数字から編集部が計算)。前提は次のとおりです。
- 配偶者がいる場合は、配偶者が法定相続分(1/2)を取得し、配偶者の税額軽減を使ったものとします
- 子はすべて実子で、相続放棄や養子はいないものとします
- 小規模宅地等の特例、未成年者控除などのほかの控除は考慮していません
配偶者と子が相続する場合(相続人全体の納税額)
| 課税価格の合計額 | 配偶者と子1人 | 配偶者と子2人 | 配偶者と子3人 |
|---|---|---|---|
| 5,000万円 | 40万円 | 10万円 | 0円 |
| 8,000万円 | 235万円 | 175万円 | 137.5万円 |
| 1億円 | 385万円 | 315万円 | 262.5万円 |
| 1億5,000万円 | 920万円 | 747.5万円 | 665万円 |
| 2億円 | 1,670万円 | 1,350万円 | 1,217.5万円 |
| 3億円 | 3,460万円 | 2,860万円 | 2,540万円 |
子だけが相続する場合(配偶者がすでに亡くなっている場合など)
| 課税価格の合計額 | 子1人 | 子2人 | 子3人 |
|---|---|---|---|
| 5,000万円 | 160万円 | 80万円 | 20万円 |
| 8,000万円 | 680万円 | 470万円 | 330万円 |
| 1億円 | 1,220万円 | 770万円 | 630万円 |
| 1億5,000万円 | 2,860万円 | 1,840万円 | 1,440万円 |
| 2億円 | 4,860万円 | 3,340万円 | 2,460万円 |
| 3億円 | 9,180万円 | 6,920万円 | 5,460万円 |
両親のうち1人が先に亡くなる「1次相続」で配偶者がすべてを相続すると、1次相続の税額は抑えられます。ただ、もう1人が亡くなる「2次相続」で子だけが相続することになり、相続人が減る分だけ基礎控除も小さくなります。1次相続の分け方は、2次相続まで見通して考えると安心です。
税額を下げる主な制度
配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例は、どちらも申告しなければ使えません。
配偶者の税額軽減
国税庁 No.4158 によると、配偶者が実際に取得した遺産の額が、1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までであれば、配偶者に相続税はかかりません[3]。
この制度を使うには、相続税の申告書を提出する必要があります。申告期限までに遺産分割がまとまっていない財産は原則として対象外ですが、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出し、3年以内に分割した場合などは適用を受けられます。
小規模宅地等の特例
国税庁 No.4124 によると、亡くなった人が住んでいた土地などを一定の親族が相続した場合、土地の評価額を大きく減らせます[4]。
| 土地の種類 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 特定居住用宅地等(自宅の敷地) | 330㎡ | 80% |
| 特定事業用宅地等(事業の敷地) | 400㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等(賃貸の敷地) | 200㎡ | 50% |
自宅の敷地の場合、取得した人ごとに、申告期限まで住み続けて所有していることなどの要件があります。この特例も申告が必要です。相続した実家を早く売る予定がある場合は、要件を満たすかどうかを事前に確認してください。
相続税額の2割加算
亡くなった人の配偶者・父母・子以外の人(兄弟姉妹、甥・姪など)が財産を取得した場合は、その人の相続税額に2割が加算されます[7]。代襲相続人となった孫と、養子は加算の対象外です(孫養子は対象になる場合があります)。
遺産を一覧にするときのチェックリスト
相続税がかかるかどうかを判定するには、財産と債務を漏れなく一覧にする必要があります。次の項目を順に確認しましょう。
| 区分 | 主なもの | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 預貯金 | 普通預金・定期預金・ネット銀行 | 通帳、残高証明書(亡くなった日の残高) |
| 不動産 | 自宅、貸している土地・建物、遠方の土地 | 固定資産税の納税通知書、名寄帳、登記事項証明書 |
| 有価証券 | 株式・投資信託・国債 | 証券会社の取引残高報告書 |
| 生命保険金・死亡退職金 | 受取人が受け取る保険金など | 保険証券、支払通知 |
| 生前の贈与 | 亡くなる前の一定期間の暦年贈与 | 通帳の振込記録、贈与税の申告書 |
| その他 | 自動車、貴金属、ゴルフ会員権、貸付金 | 車検証、契約書など |
| 債務・葬式費用 | 借入金、未払いの医療費・税金、葬儀費用 | 契約書、請求書、領収書 |
債務と葬式費用を差し引けるかどうかは、国税庁 No.4126 で確認できます[6]。
名義が家族になっていても、実際には亡くなった人のお金で作られた預金(いわゆる名義預金)は、相続財産として扱われることがあります。家族名義の口座についても、お金の出どころを確認しておきましょう。
申告と納税の期限
相続税の申告と納税の期限は、亡くなったことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10か月以内です[9]。期限が土日祝日などの場合は、翌日(休日明け)が期限になります。期限に遅れると、加算税や延滞税がかかることがあります。
相続税の主な期限
起点
亡くなったことを知った日(通常は亡くなった日)
翌日から10か月以内
相続税の申告と納税[9]
申告期限から3年以内
「申告期限後3年以内の分割見込書」を出した財産を分割すると、配偶者の税額軽減を受けられる[3]
遺産分割がまとまらなくても、申告期限は延びません。
うちの期限を計算する遺産分割がまとまらない場合は、法定相続分で取得したものとしていったん申告・納税し、分割がまとまった後に修正申告や更正の請求をすることになります。
財産の調査と評価、遺産分割協議、特例を使えるかの確認には時間がかかります。期限に追われないよう、早めに始めましょう。
相続税が払えない場合と、実家を売る場合
相続税は原則として現金で一括で納めます。手元の現金が足りない場合は、延納や物納の制度もありますが、要件があります。
相続した実家を売って納税資金に充てる場合は、一定の期間内に売ると、納めた相続税の一部を取得費に加えられる特例(取得費加算の特例)があります。売却の手順と税金は相続した実家の売却の流れで説明しています。
自分で申告するか、税理士に頼むか
遺産の内容と特例を使うかどうかで、自分で申告できるかの目安が変わります。相続税に対応する税理士を探す場合は、紹介サービスを使う方法もあります(税理士ドットコムの公式サイトを見る)。
| 状況 | 目安 |
|---|---|
| 遺産が基礎控除以下と明らか | 申告は不要です |
| 遺産が預貯金中心で、特例を使わない | 国税庁の案内を見ながら自分で申告する人もいます |
| 土地がある、小規模宅地等の特例を使う | 評価と要件の確認が必要なため、税理士への相談をおすすめします |
| 遺産分割がまとまらない | 期限内の申告と、分割後の手続きが必要になるため、専門家に相談してください |
税務署では相続税の一般的な相談を受け付けています。国税庁のウェブサイトには、相続税の申告書の書き方や、相続税がかかるかどうかを判定する案内も掲載されています。税理士の報酬は事務所ごとに異なるため、見積もりを取って比べてください。


