「久しぶりに実家へ行ったら、軒下にハチの巣ができていた」「床がふかふかしている」「近所から、空き家からネズミが出ていると言われた」。親から相続した実家を空き家のままにしていると、こうしたことが起こりえます。
空き家は人の出入りがなく、害虫やネズミにとって住みつきやすい環境です。放っておくと、建物の傷みが進むだけでなく、近隣とのトラブルや、空家法にもとづく行政の指導につながることもあります。
この記事では、空き家で問題になりやすい4種類の害虫と被害、対策の優先順位、業者の選び方、空家法との関係を整理します。
なお、親子ナビ編集部は害虫駆除の専門家ではありません。駆除の判断や作業は、専門業者に相談してください。
空き家に害虫が発生しやすい3つの理由
1. 換気されず湿気がこもる
窓を閉め切った家は湿気がこもりやすく、床下や押し入れ、水回りは特に湿った状態が続きます。
日本しろあり対策協会によると、ヤマトシロアリは湿ったところを好み、湿った木材や土の中で生活して、主に建物の下の方を加害します[5]。
2. 食品や段ボールが残っている
片付けきれずに残った調味料・乾物・お米、仏壇のお供え物、古い段ボールや新聞紙などは、ネズミやゴキブリのえさや住みかになります。遺品整理の際に、食品や紙類を早めに処分しておくことが予防になります。
3. すき間や庭の手入れ不足
長く手入れされていない家には、外壁のひび割れ、換気口の網の破れ、配管まわりのすき間など、侵入口ができやすくなります。庭の雑草や枯れ木、落ち葉も、ハチやネズミの住みかになります。
害虫4種類の被害と優先順位
| 比べる項目 | スズメバチ・アシナガバチ | シロアリ | ネズミ | ゴキブリなど |
|---|---|---|---|---|
| 主な被害 | 軒下・戸袋・天井裏などへの営巣。刺される危険 | 土台・柱・床下など建物の木材の食害 | 配線のかじり、ふん尿による汚れ、天井裏での繁殖 | 残った食品の汚染、繁殖 |
| 緊急度の目安 | 高い(近隣の人にも危険が及ぶ) | 中〜高(見えにくいが建物の傷みに直結) | 高い(近隣にも影響しやすい) | 中(片付けと合わせて対策) |
| 対策の基本 | 近づかず専門業者に相談 | 定期的な床下点検と業者の調査 | 駆除と侵入口ふさぎをセットで | 残置物の片付けと合わせて対策 |
対策の優先順位
- 刺される危険があるハチ:巣を見つけたら近づかず、専門業者に相談します。
- 建物の傷みにつながるシロアリ:外から見えにくいため、定期的な床下点検が大切です。
- 近隣にも影響するネズミ:駆除と侵入口ふさぎをセットで行います。
- ゴキブリなど:残置物の片付けと合わせて対策します。
1種類見つかったら、ほかの害虫が出ていないかもあわせて業者に調べてもらうと、対策の漏れを防ぎやすくなります。
シロアリ:建物の傷みに直結する
シロアリは、建物の土台や柱など構造部分の木材を内側から食べるため、外からはほとんど分かりません。気づいたときには、床が沈む、柱を押すとへこむといった状態になっていることがあります。
日本しろあり対策協会の解説では、主な種類の特徴は次のとおりです[5]。
- ヤマトシロアリ:湿ったところを好み、主に建物の下の方を加害する。被害は木材の腐れと同時に起こることが多い
- イエシロアリ:土の中などに大きな巣をつくり、加害の速度が速い。乾いた木材にも水を運んで加害するため、被害が建物全体に及ぶことがある
シロアリ被害のサイン
- 床がふかふかする、歩くと沈む
- 柱や敷居を押すとへこむ
- 春から初夏にかけて、羽アリがたくさん出る
- 床下の基礎に、土でできたトンネルのような筋(蟻道)がある
市販の薬剤を表面にまくだけでは、巣まで届かず、しばらくして再発することがあります。空き家のシロアリは、調査を含めて専門業者に相談しましょう。
費用は、建物の広さ・被害の範囲・工法(薬剤の散布、毒えさを使うベイト工法など)によって大きく異なります。食害された部分の修繕が必要な場合は、別に費用がかかります。
ハチ:自分で駆除しない
空き家の軒下や戸袋、天井裏は、ハチが巣をつくりやすい場所です。特にスズメバチは攻撃性が強く、刺されると重い症状が出ることもあります。空き家の巣が原因で近隣の人が刺されれば、トラブルにもなります。
費用が変わる主な要因
- ハチの種類と巣の大きさ
- 巣の高さ(2階の軒下や屋根裏などは高所作業になる)
- 巣の場所(壁の中や床下は、一部を壊す作業が必要になることも)
- 夜間・休日の対応かどうか
スズメバチの巣の駆除費用の一部を補助する市区町村もあります。たとえば埼玉県熊谷市は、業者に依頼して駆除した費用を上限10,000円まで補助しています(予算に達すると受付終了、アシナガバチやミツバチの巣は対象外)[6]。空き家がある市区町村の制度を確認しましょう。
ネズミ・ゴキブリ:片付けと侵入口ふさぎが基本
ネズミとゴキブリは、一度すみつくと根絶が難しい害虫です。
ネズミ
ネズミは天井裏などで電気の配線や断熱材をかじることがあり、ふん尿による汚れや臭いの原因にもなります。
毒えさや粘着シートだけで済ませると、家の中で死んだネズミが悪臭やハエの発生につながることもあります。駆除と同時に、侵入口をふさぐ工事と、汚れた場所の清掃・消毒もあわせて相談しましょう。
ゴキブリなど
残った食品や段ボールがあると繁殖しやすくなります。まずは食品や紙類を処分し、そのうえで必要に応じて業者の施工を検討します。
放置するとどうなるか:空家法と固定資産税
管理不全空家・特定空家として指導や勧告を受ける
空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)は、空き家の所有者等に、周辺の生活環境に悪い影響を及ぼさないよう、空き家を適切に管理する努力義務を定めています(第5条)[1]。
特定空家等とは、倒壊などの危険があるもの、著しく衛生上有害となるおそれのある状態のもの、景観を著しく損なっているものなどをいいます(第2条第2項)。特定空家等になると、助言・指導、勧告、命令、さらに行政代執行(強制的な除却など)の対象になりえます(第22条)[1]。
勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が外れる
住宅が建っている土地には、固定資産税の計算のもとになる額を小さな住宅用地なら1/6などに減らす「住宅用地特例」があります。
国土交通省の資料によると、勧告を受けた特定空家等だけでなく、勧告を受けた管理不全空家等の敷地も、この特例が解除されます[2]。特例が外れると、土地の固定資産税の負担が大きく増えることになります。
建物の価値が下がり、売りにくくなる
シロアリの被害や雨漏りなどが進むと、修繕費がかさみ、売却の際の価格にも影響します。売るときは、知っている不具合を買主に伝える必要があります。早めに調査・対策しておけば、状況を説明しやすくなります。
業者選びの5つのポイント
- 見積もりの内訳:「一式」ではなく、作業内容・範囲・薬剤・保証・追加料金がかかる条件が書かれているか。
- 保証の有無と期間:再発したときに無料で再施工してもらえるか、保証期間は何年か。
- 資格や団体:シロアリ対策なら、日本しろあり対策協会の「しろあり防除施工士」などの資格者がいるか。
- 現地調査をしてから見積もるか:電話だけで高額な契約を急がせる業者は避けましょう。
- 複数社の比較:緊急でない場合は、2〜3社の見積もりを比べます。
売却や活用を考えているなら
相続した実家を「売る」「貸す」「住む」のどれにするか決める前に、害虫の状況を調べておくと、判断がしやすくなります。
残置物を片付ける
食品や紙類から処分します。
害虫の調査を依頼する
シロアリ・ハチ・ネズミをまとめて見てもらうと効率的です。
危険なものから対策する
ハチ → シロアリ → ネズミの順に検討します。
侵入口をふさぎ、庭を手入れする
再発を防ぎます。
施工の記録や保証書を保管する
売却や賃貸の際に、どんな対策をしたかを説明する資料になります。
相続した実家を売る場合は、条件を満たせば「被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除」が使えることがあります(2024年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は1人あたり2,000万円まで)[8]。売る期限など細かい要件があるので、国税庁のタックスアンサーNo.3306を確認し、早めに方針を決めましょう。要件に当てはまりそうかは、空き家の3,000万円特別控除 判定チェックで質問に答えて確認できます。
実家を売る方向で考えている場合は、仲介会社の売却査定を比べるのもひとつの方法です。傷みのある家を早く手放したいときの選択肢は「空き家の買取と仲介の違い」で比べています。
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