相続発生 → 3ヶ月以内(相続放棄判断) → 4ヶ月以内(準確定申告) → 10ヶ月以内(相続税申告) → 3年以内(相続登記の義務期限) → 売却活動3〜6ヶ月 → 引渡し翌年2/16〜3/15(譲渡所得税の確定申告)
ステップ1: 相続登記(2024年4月義務化)
実家を売却するには、まず故人名義のままになっている不動産の名義を相続人に変更する「相続登記」が必要です。これを完了させない限り、売却はできません。長らく義務ではなく「いつかやればいい」と放置されがちでしたが、所有者不明土地が九州の面積を超える規模(約410万ha・2017年所有者不明土地問題研究会推計)に達したことを受け、2024年4月から義務化されました。
2024年(令和6年)4月1日から、相続(遺言を含む)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務化されました。正当な理由なくこれに違反した場合、10万円以下の過料の対象となります。施行日前に発生した相続も適用対象(2027年3月末までに登記が必要)。
出典: 法務省「相続登記の申請義務化について」
相続登記に必要な主な書類
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(本籍地を転々としている場合は複数自治体に取り寄せ)
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書
- 遺産分割協議書(法定相続分以外で分ける場合)
- 不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書
費用と期間の目安
| 項目 | 費用・期間の目安 |
|---|---|
| 登録免許税 | 固定資産評価額 × 0.4%(評価額2,000万円なら8万円) |
| 司法書士報酬 | 5〜15万円(物件数・相続人数による) |
| 必要書類取得費 | 5,000〜2万円(戸籍・住民票・登記簿等) |
| 所要期間 | 書類収集2週間〜2ヶ月+申請後1〜2週間 |
ステップ2: 不動産会社選びと一括査定
相続登記の見通しが立ったら、並行して不動産会社選びに入ります。査定額は会社によって数百万円単位で差が出るのが実情。1社だけに依頼すると相場感が分からず、安く売り急いでしまうリスクがあります。特に相続物件は「早く処分したい」心理から相場以下で売却してしまうケースが頻発します。
不動産会社の3タイプ
- 大手仲介(三井のリハウス・住友不動産販売・東急リバブル等): 全国ネットワーク・広告力。郊外・地方は対応エリア外のことも
- 地域密着型仲介: 地元の買い手ネットワークが強い。郊外・地方では大手より早く売れることも多い
- 不動産会社による直接買取: 仲介ではなく業者自身が買主に。即現金化できるが価格は仲介の60〜80%
査定の3パターン
- 机上査定(簡易査定): 物件情報のみで概算。所要時間1〜3日。匿名で依頼可能なサービスも
- 訪問査定: 実際に現地を見ての査定。所要1週間程度。精度が高く、契約前提の場合はこちら
- 一括査定サイト: 1回の入力で複数社に依頼可。比較効率が高い
国土交通省の「不動産取引価格情報検索」でも、同じエリア・同じ広さでも成約価格に大きな幅があることが分かります。査定は最低でも3社以上を比較し、極端に高い・低い査定の根拠を必ず確認しましょう。「高く売れます」と煽る業者は要注意(囲い込み・両手仲介目的の可能性)。
出典: 国土交通省「不動産取引価格情報検索」
ステップ3: 媒介契約3種類の比較
査定で会社を絞ったら、不動産会社と媒介契約を結びます。種類は3つあり、それぞれ拘束力と業者の動き方が異なります。
| 項目 | 一般媒介 | 専任媒介 | 専属専任媒介 |
|---|---|---|---|
| 複数社契約 | ○ 可 | × 不可 | × 不可 |
| 自己発見取引 | ○ 可 | ○ 可 | × 不可 |
| レインズ登録義務 | 任意 | 7日以内 | 5日以内 |
| 業務報告義務 | 任意 | 2週間に1回 | 1週間に1回 |
| 契約期間 | 制限なし(行政指導3ヶ月) | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
| 向いているケース | 人気物件・複数社比較したい | 標準的な物件 | 業者にじっくり動いてほしい |
ステップ4: 売却活動・内覧対応
媒介契約締結後、不動産会社が広告掲載・レインズ(指定流通機構)登録・購入希望者の問い合わせ対応を行います。空き家でも内覧時には準備が必要です。一般的に売却活動の期間は3〜6ヶ月。3ヶ月経って反響が薄い場合は、価格見直し・媒介契約の切替・販売手法の変更を検討するタイミングです。
販売価格の決め方
売出価格は査定額そのままではなく、査定額 × 1.05〜1.10程度で設定するのが一般的(値引き交渉余地を残す)。ただし市場価格より明らかに高い設定は反響を激減させるため、不動産会社の提案する適正レンジを大きく逸脱しないこと。総務省「住宅・土地統計調査」によれば、全国の空き家率は13.8%(2023年)と過去最高で、特に地方は買い手市場が続いています。
内覧前の準備チェックリスト
- 遺品整理・残置物撤去: 家財道具が残っていると印象が悪く、価格交渉で値下げ要求されやすい
- 水回りの清掃: キッチン・浴室・トイレの汚れは買主の印象を最も左右する
- 庭木・雑草の手入れ: 第一印象を決める外観
- ライフライン: 電気・水道は内覧期間中だけでも復活させると照明・水流確認ができる
- 近隣への挨拶: 売却中である旨の事前共有でトラブル予防
ステップ5: 売買契約・引渡し
購入希望者と価格・条件で合意したら、売買契約 → 決済・引渡しの流れに進みます。
売買契約から引渡しまでの流れ
仲介手数料の上限(法定)
| 売買価格 | 仲介手数料の上限(税抜) |
|---|---|
| 200万円以下 | 売買価格 × 5% |
| 200万円超〜400万円以下 | 売買価格 × 4% + 2万円 |
| 400万円超 | 売買価格 × 3% + 6万円 |
※2024年7月から、800万円以下の物件は特例で30万円(税抜)まで請求可能に。出典: 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」
ステップ6: 確定申告(譲渡所得税)
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、翌年2月16日〜3月15日に確定申告が必要です。相続物件には大きな特例があり、知らないと数百万円損する可能性があります。
譲渡所得税の計算式
税率: 所有期間5年超(長期譲渡所得) = 20.315%(所得税15% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5%)
取得費が不明な場合: 売却価格 × 5%(概算取得費)で計算 → 課税額が大きくなりがちなので、購入時の契約書を必死で探すべき
使える主な特例(相続物件)
- 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の3,000万円特別控除: 親が一人暮らしだった実家を相続後3年以内・2027年12月31日までに売却すると、譲渡所得から最大3,000万円控除。耐震基準・更地化等の要件あり
- 取得費加算の特例: 相続税申告期限の翌日から3年以内に売却すると、支払った相続税の一部を取得費に加算できる
- 10年超所有軽減税率の特例: 居住用財産で所有期間10年超の場合、6,000万円以下の部分に軽減税率(所得税10.21%・住民税4%)
3,000万円特別控除の主な要件(空き家特例)
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋であること
- 区分所有建物(マンション)以外であること
- 相続開始直前に被相続人が一人で居住していたこと(老人ホーム入居中の特例あり)
- 相続後、譲渡まで貸付・事業・居住用に使われていないこと
- 譲渡時に耐震リフォーム済または家屋取壊し後の更地であること(2024年改正で買主による翌年2月15日までの取壊し・耐震改修も可能に)
- 譲渡対価が1億円以下
相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋・敷地等を、令和9年(2027年)12月31日までの間に売って一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得から最高3,000万円まで控除することができます。
出典: 国税庁タックスアンサーNo.3306
ステップ7: 相続税申告(10ヶ月以内)
相続税は相続発生を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告・納付が必要(国税庁)。基礎控除は3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数。例えば配偶者と子2人なら4,800万円までは申告不要です。
申告が必要なケース
- 遺産総額(不動産・預金・有価証券・生命保険等)が基礎控除額を超える
- 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を使う場合は税額0でも申告必須
- 「相続税の取得費加算の特例」を売却で使う場合も申告ベースが必要
出典: 国税庁タックスアンサーNo.4152「相続税の計算」
よくある失敗5選
| 失敗例 | どうすべきだったか |
|---|---|
| 1社だけの査定で売り急いだ | 必ず3社以上を比較。一括査定サイト活用 |
| 相続登記を後回しにして売却機会を逃した | 遺産分割協議と並行して相続登記を着手 |
| 3,000万円特別控除の要件を満たさず売却 | 耐震診断・更地化の要否を事前に税理士・不動産会社へ確認 |
| 取得費が不明で概算5%課税になった | 購入時の売買契約書・領収書を徹底的に探す。リフォーム費用も取得費加算可 |
| 遺品を残したまま内覧 → 大幅値引き要求 | 遺品整理を先に完了させる(費用15〜50万円が値引き額より小さいケース多数) |
売れない時の選択肢
査定が予想を下回る、長期間売れない、訳あり物件等の場合、通常仲介以外の選択肢を検討します。
| 選択肢 | 特徴・向いているケース |
|---|---|
| 不動産会社による直接買取 | 相場の60〜80%だが最短1週間で現金化。仲介手数料不要 |
| リースバック | 売却後も親が住み続けたいケース。詳細 |
| 訳あり物件専門業者 | 事故物件・再建築不可・共有持分・借地権などの特殊物件専門 |
| 借地権物件の専門買取 | 底地権者との交渉ノウハウを持つ専門業者へ |
| 空き家バンク | 地方自治体の登録制度。地元密着でゆっくり探したい場合 |
| 解体して土地として売却 | 築古・需要なしの場合。解体費100〜200万円が必要 |
よくある質問
相続登記を3年以内にしないとどうなる?
2024年4月の法改正により、正当な理由なく3年以内に登記しない場合、10万円以下の過料の対象となります(法務省)。施行日前の相続も2027年3月末までに登記が必要。さらに登記しないと売却・担保設定等も一切できません。
遺産分割協議が長引いて売却が進まない場合は?
共同相続人全員の合意がないと売却できません。協議がまとまらない場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てる方法があります。それでも合意できない場合は「審判」へ。長引くと数年単位になることも。
住宅ローンが残っている実家でも売却できる?
売却金で完済できる範囲なら可能。残債が査定額を超える「オーバーローン」の場合は、別途自己資金で補填するか、金融機関と相談して任意売却を検討します。
兄弟で共有名義のまま売却するには?
共有者全員の同意が必要です。売却代金は持分割合で分配。一人でも反対すると売却できないため、相続時に単独名義 or 売却前提の合意書を作っておくのがベター。
売却までにかかる期間の目安は?
相続登記1〜2ヶ月 + 売却活動3〜6ヶ月 + 決済・引渡し1〜2ヶ月 = 合計5〜10ヶ月が標準。地方・築古は1年以上かかるケースも。相続税申告期限(10ヶ月以内)の取得費加算特例を使う場合は申告期限の翌日から3年以内に売却を。
- 法務局「相続登記相談」: 全国の法務局で予約制の無料相談あり
- 日本司法書士会連合会「相続登記相談センター」: 司法書士による無料相談
- 税務署「相続税の相談」: 国税局電話相談センターまたは事前予約面接相談
- 各自治体の「無料法律相談」: 弁護士による30分程度の相談が月数回開催
- 国土交通省「不動産取引価格情報検索」: 過去の成約事例で相場感を確認
※私たち親子ナビ編集部は法律・税務の専門家ではありません。具体的な手続きは必ず司法書士・税理士・宅建士にご相談ください。
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