親の高齢化を機に「一日葬(いちにちそう)」を検討し始めた方へ。一日葬は通夜を行わず、告別式と火葬を1日で行う葬儀です。
費用や日数を抑えやすい一方、段取りや親族への説明、菩提寺との調整など、通夜がないからこその注意点があります。
親子ナビ編集部は葬儀社・宗教者ではありません。この記事は公表されている調査や法令をもとにした一般的な情報です。最終的な判断は、複数の葬儀社で見積もりを取り、ご家族・菩提寺と相談して決めてください。
一日葬の費用相場
鎌倉新書が2026年2〜3月に実施した「第7回お葬式に関する全国調査」(直近2年以内に喪主を経験した40歳以上の2,000人が回答)では、一日葬の平均費用は約74.4万円、家族葬は約96.4万円でした[1]。この金額には僧侶へのお布施など宗教者へのお礼は含まれていません。
葬儀一式の費用 + 飲食・返礼品の費用 + 宗教者へのお礼 = 総額
葬儀一式の費用
プランで異なる
祭壇・棺・遺影・霊柩車・スタッフ・式場使用料(1日分)
飲食・返礼品の費用
参列者の人数で変わる
精進落とし・返礼品(通夜振る舞いはない)
宗教者へのお礼
住職に確認する
お布施・戒名料・お車代など(調査の平均額には含まれない)
総額
平均約74.4万円(お布施などは含まない)
※平均費用は鎌倉新書「第7回お葬式に関する全国調査(2026年)」によるものです。
費用が変わる主な要因
火葬場の料金(自治体や住民かどうかで異なる)、式場使用料、参列者の人数(飲食・返礼品の数)で総額は前後します。
都市部などでは火葬場の予約が取れず、安置の日数が延びて安置料やドライアイス代が増えることもあります。葬儀社には最初に「総額の上限」を伝え、追加費用が出る条件を契約前に確認しておきましょう。
家族葬と比べて省ける費用
一日葬では、家族葬と比べて主に次の費用がかからないか、少なくなります。
- 通夜振る舞いの飲食費
- 通夜の分の式場使用料
- 通夜の分のスタッフ・受付の費用
一方で、お布施は「1日分だから半分」とは限りません。通夜の読経がない場合の金額は住職の考え方によるため、必ず事前に確認してください。
一日葬の流れ(2日間)
「一日葬」という名前ですが、亡くなった日から火葬までは2日以上かかるのが一般的です。法律で、火葬は原則として死亡後24時間を経過した後でなければ行えないためです(墓地、埋葬等に関する法律 第3条)[2]。
逝去・搬送
葬儀社に連絡し、安置場所へ搬送します。
打ち合わせ・納棺
参列者の人数・祭壇・宗派・お布施・火葬場の予約などを打ち合わせます。納棺は1日目の夕方〜夜が多いですが、2日目の朝になる場合もあります。
告別式
開式→僧侶入場→読経→弔辞・弔電→焼香→僧侶退場→閉式が一般的な流れです。
出棺・火葬
棺に花を入れるお別れの儀の後、出棺します。火葬の間は控室で待ちます。
収骨・精進落とし
遺骨を骨壺に納め、会食をして解散です。地域によっては初七日法要を繰り上げて行うこともあります。
全体:2日以上(1日目に安置・納棺、2日目に告別式と火葬)
1日目:逝去から納棺まで
亡くなったら葬儀社に連絡し、病院から安置場所(自宅や葬儀社の安置施設)へ搬送します。安置後、葬儀社の担当者と参列者の人数・祭壇・宗派・お布施・火葬場の予約などを打ち合わせます。
2日目:告別式から収骨まで
開式の前に喪主・親族が集まり、受付の準備をします。通夜がないため、参列者には朝〜午前に集まってもらうことになり、遠方の親族は前泊が必要になることもあります。
火葬場の予約時間から逆算して開式時刻を決めるため、午後開式になることもあります。
一日葬と他の葬儀形式の違い
平均費用は鎌倉新書2026年調査(お布施などを含まない)です[1]。
| 比べる項目 | 直葬・火葬式 | 一日葬 | 家族葬 | 一般葬 |
|---|---|---|---|---|
| 平均費用 | 約49.6万円 | 約74.4万円 | 約96.4万円 | 約122.0万円 |
| 通夜 | なし | なし | あり | あり |
| こんな方に | 儀式を行わず火葬のみで見送る | 儀式は行いたいが日数・費用を抑えたい | 親族や親しい人で従来の形式の葬儀を行う | 故人の交友関係が広い・地域の慣習 |
同じ調査で葬儀形式を選んだ割合は、家族葬47.0%、一般葬30.2%、一日葬11.9%、直葬・火葬式10.8%でした[1]。
一日葬のメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 家族葬より費用を抑えやすい | 菩提寺によっては認められないことがある |
| 喪主・参列者の拘束時間が短い | 故人と過ごす「通夜の夜」がない |
| 遠方の親族の宿泊負担を減らせる | 朝の集合になり、高齢の親族には負担になることも |
| 飲食の準備・片付けが少ない | 後日の弔問が分散しやすい |
一日葬を選ぶときの5つの注意点
- 菩提寺が一日葬を認めるか確認する:通夜の読経を省略しない方針の寺院もあります。菩提寺がある場合に独断で決めると、納骨や戒名の相談がこじれることがあるため、最初に住職へ相談してください。
- 遠方の親族に「通夜なし」を伝える:訃報の連絡で「一日葬で行います・告別式は◯月◯日◯時から」と明記しましょう。
- お布施の金額を事前に確認する:「お気持ちで」と言われても、目安を聞いて構いません。
- 朝の集合の負担に配慮する:高齢の親族や遠方の参列者には、前泊や送迎の手配を検討します。
- 後日の弔問に備える:式に来られなかった方が後日自宅を訪ねてくることがあります。対応できる日時を案内しておくと負担を分散できます。
「通夜なし」を伝える訃報文の例
〇〇〇〇(故人名)儀 かねてより療養中のところ ◯月◯日に永眠いたしました。享年◯◯。 葬儀は故人および家族の意向により「一日葬」として執り行います。通夜は行いませんので、あらかじめご承知おきください。 日時:◯月◯日(◯)午前◯時より 場所:◯◯斎場(住所・電話) 喪主:◯◯ ◯◯ ※ご香典・ご供花・ご供物は辞退申し上げます。
香典や供花を辞退する場合はそのことを、服装の指定がある場合はその旨を書き添えましょう。
喪主のやることリスト(一日葬の場合)
逝去直後
- 葬儀社へ連絡(搬送の依頼)
- 医師から死亡診断書を受け取る
- 安置場所を決める(自宅か葬儀社の施設)
- 近い親族へ第一報
1日目 午後〜夜
- 葬儀社と打ち合わせ(参列者数・祭壇・お布施・火葬場の予約)
- 菩提寺・住職への連絡(一日葬でよいかの確認)
- 遺影写真を選ぶ
- 訃報の連絡、勤務先への連絡
- 納棺の立ち会い
2日目(告別式当日)
- 開式より早めに会場入り
- 受付係への指示(親族から数名にお願いする)
- 僧侶へのお布施の受け渡し
- 喪主あいさつ(告別式の閉式時・精進落としの冒頭)
葬儀後
- 葬儀費用の精算と領収書の保管(相続税の計算で葬式費用として差し引ける[4])
- 香典返しの手配(辞退していない場合)
- 役所などの手続き(下の期限を参照)
- 四十九日法要の日程調整
葬儀の前後の主な期限
起点
亡くなった日(死亡届は死亡を知った日)
24時間経過後
火葬ができる[2]
墓地埋葬法 第3条
7日以内
死亡届の提出(葬儀社が提出を代行することが多い)[3]
戸籍法 第86条
10日以内
年金を受けていた場合の死亡の届出(厚生年金)[5]
14日以内
年金を受けていた場合の死亡の届出(国民年金)[5]
年金の死亡の届出は、マイナンバーが登録されていれば原則省略できます。
喪主あいさつの文例(告別式の閉式時)
本日はご多用のところ、亡き◯◯のためにご会葬を賜り、誠にありがとうございました。故人の意向もあり、本日は一日葬という形で営ませていただきました。皆様にお別れの時間を共にしていただけましたこと、故人もさぞ喜んでいることと存じます。このあと火葬場へと出棺いたします。生前のご厚誼に深く感謝申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。
原稿を見ながら読んでも失礼にはあたりません。
一日葬を後悔しないための葬儀社選び
葬儀社比較で確認すべき5項目
- 一日葬のプランがあるか:家族葬プランから通夜を外す形で見積もる会社と、一日葬専用のプランを用意している会社があります。
- 見積書の内訳が細かいか:「祭壇一式」だけでなく、棺・霊柩車・スタッフなどの内訳があるか。
- プラン外オプションの料金表を出してくれるか:当日に高額なオプションを勧められても冷静に判断できます。
- 24時間連絡がつき、深夜の搬送に対応しているか
- 一日葬の実績があるか:僧侶との調整や火葬場の予約に慣れているかを質問してみましょう。
事前見積もりを取るタイミング
事前見積もりは親が元気なうちに取るのが理想です。亡くなってから1社だけに連絡すると、比べる材料がないまま契約することになりがちです。
複数社の見積もりを取り、説明がわかりやすかった葬儀社を家族で共有しておきましょう。
一日葬が選ばれやすいケース
次のような事情があるご家庭では、一日葬が現実的な選択肢になりやすいです。
- 喪主が現役世代で、長く休みを取りにくい
- 遠方の親族が多く、2日続けての参列が負担になる
- 故人が高齢で、同世代の参列者が少ない
- 故人が「家族に負担をかけたくない」と話していた
反対に、菩提寺との関係を重視する家庭、故人の交友関係が広い家庭、通夜を大切にする地域では、一日葬を避ける傾向もあります。家族の事情・故人の意向・地域の慣習の3つをあわせて考えることが大切です。


